J1仙台の関憲太郎(31)は、どんなときでもクラブに欠かせないGKだ。

 関はGKシュミット・ダニエル(25)に代わり、スタメンに返り咲いている。9月23日アウェーC大阪戦の前日練習でシュミットが負傷、急きょ先発を任されることになった。チーム史上最悪の7失点を喫した4月浦和戦以降、リーグ戦21試合出場していなかった。久しぶりの先発へ意気込みを問われると「柔軟に対応します」と一言残し、敵地へ向かった。結果、好セーブを連発し、4-1と大勝に貢献した。

 2番手以降のGKは、いつ出番が来るかわからない。「出てないときでも『1週間経ったら試合に出るんだ』というイメージ、メンタルを大事にしています」と準備を怠らず、結果を残したことも素晴らしいが、この男の魅力はそれだけじゃない。出場機会が激減した時期、チームのために短期的、長期的ビジョンを持って、ある練習法を提唱していた。

 GK陣の練習の順番を変更した。基本は年齢順。年長者が率先してやるか、若手が“見本”となり練習のコツを後に控える先輩たちに教えるか。仙台は前者だった。だが「何かを変えなきゃ。マンネリ化しないように」と、じゃんけんで順番を決めることにした。この時期、チームはどん底だった。自身がゴールマウスを守ったルヴァン杯1次リーグこそ快進撃を続けたが、リーグ戦は2桁順位。天皇杯は筑波大に敗れ2年連続で初戦敗退した。悪い流れを変えたかった。

 まだ狙いはある。「自分がケガしたときのために」。仙台のGK事情は厳しい。石川は2度の脳振とうで3カ月間も長期離脱、最近一部合流を果たしたばかり。GK陣では関とチーム最年少の韓国人GKイの2人だけが、通常メニューをこなす時期が続いた。関も「将来有望」と評する期待の若手のイだが、まだ18歳。来日1年目で公式戦出場はなく、経験が浅すぎる。こういう状況を踏まえ、言った。「ユノにしても、練習で3番目か1番目かで緊張感が違う。1番最初にやることで、景色が変わる。10代の頃からやることで、ユノも成長できるんじゃないか」

 「ケガしたらチームはちょっとピンチになる」と故障は避けたい。ただ、チーム力の底上げを図ると同時に、不測の事態にも備える必要も生じていたのも事実。それも見越しての「じゃんけん」だった。先輩の決断に、イは「そこまで気配ってくれていることに感謝します」と語った。

 今月、仙台の守備事情は厳しかった。14日には1人少ない川崎Fに終盤の5分間で2点リードをひっくり返され、逆転負け。試合後、関も悔しかっただろうが、事細やかに当時のピッチ内の状況を説明してくれた。21日の清水戦に向け、責任を感じていたDF大岩に「(チームメートに)怒鳴ってでもやっていこう」と伝えた。結果、同戦は無失点勝利。こんな大黒柱が最後方で構えているのだから、仙台の未来は明るいはずだ。


 ◆秋吉裕介(あきよし・ゆうすけ)1993年(平5)6月28日、横浜市生まれ。16年4月入社、同年11月から仙台担当。私事になりますが、今月を持ちまして担当を離れることになりました。1年間、渡辺監督を筆頭にコーチ、スタッフ、選手、関係者の皆様、そして読者の皆様には大変お世話になりました。この場を借りて、感謝の意を表します。