ハリル日本が初陣勝利で「進むべき道」を示した。日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(62)の初采配となった日本(FIFAランク53位)は、チュニジア(同25位)と対戦。長谷部、吉田以外は新戦力を先発起用する一方、香川、本田、岡崎ら従来の主力組を後半途中で投入し、快勝に導いた。戦術浸透と戦力テスト、さらに結果と収穫を重ね、ハリル流改革断行に弾みをつけた。31日にはウズベキスタンとの親善試合第2戦を行う。

 試合後のロッカールーム。ハリルホジッチ監督は選手たちを集め、こう切り出した。「こんなに短い期間で、よくぞここまで新しいやり方を形にしてくれた。正直驚いた」。規律を重んじ、厳格さを貫く指揮官が、手放しで褒めたたえた。

 FW武藤、川又らが決定機をDFに阻まれると、両手を上げて天を仰いだ。ショートパスをつなぎすぎて、縦への攻撃速度が遅くなると、ピッチサイドのペットボトルを踏み付けた。それでも選手を褒めるのは、ハリル流サッカーを体現しようと、各自が必死にプレーしたからだ。

 ハリルホジッチ もっと長いパスを狙ってほしい。スピードを保ちながらのテクニックも足りない。でも彼らは求めたことを、本気でやろうとしてくれた。

 前半から選手たちは、中盤からの縦パスをスルーし、より前方の選手に受けさせる連係を多用。パスの受け手よりもさらに前方を走る、3人目の動きでDFラインの裏を狙った。守備でも果敢なプレスで、相手をシュート2本に封じた。

 多くの選手をテストすることもできた。アギーレ監督時代の不動の主力11人の中で、この日の先発はMF長谷部、DF吉田だけ。初招集のDF藤春、FW川又を先発起用し、平均年齢は2歳以上若くなった。

 「本田、香川、内田の質は知っている。他の選手に機会を与えたかった」。十分な時間を使ってテストをした上で、後半15分以降にはMF香川、FW本田、岡崎らを投入。同33分には本田の左クロスから岡崎が頭で合わせて、試合を決する新体制初得点を挙げた。

 船出を飾る歓喜の瞬間。しかしハリルホジッチ監督は喜ぶ選手に背を向け、顎に手を当てて考えにふけっていた。同38分に本田が2点目を挙げた後も、厳しい表情で選手たちの攻守の動きに注文をつけた。「合宿で合理的な変化をもたらせた。でも、この道はまだまだ続く」。次戦も大幅にメンバーを代え、テストを重ねることも明かした。

 ハリルホジッチ この考え方、このモチベーションを保っていけば、新しい日本が生まれる。今夜、道は示せた。また始まったばかりで、いつか失望があるかもしれないけど、みんなに受け入れてほしい。

 選手の前向きな姿勢。充実の戦力テスト。そして勝利。収穫は多かったが、それ以上に、日本の進むべき道を示せたことを重視する。ハリル流改革は、順風の中でスタートが切られた。【塩畑大輔】