48歳のJ2横浜FC・FWカズ(三浦知良)が今季初ゴールを決めた。前半14分に鮮やかなヘディングシュートで、自身の持つJリーグ最年長得点記録を48歳1カ月10日に更新。お約束のカズダンスも披露した。チームは逆転負けしたが、プロ30年目を迎えた年男がJ2首位の名門から、世界に誇れる記録的年長弾。ストライカーの真価を発揮した。

 得点後の儀式、こだわりのカズダンスのステップは左へと流れた。天に向かって右手の人さし指を突き上げる決めポーズもなし。「五十肩で腕が上がらなかったのかもしれないですね」。ジョークで照れ隠しして笑わせた48歳は、13年11月3日松本戦(ニッパツ)以来1年5カ月ぶりの得点に興奮していた。だからダンスがわずかに乱れた。

 鮮やかな得点だった。前半14分。右クロスに跳び上がった。「(タイミングが)若干遅れたかなと。思い切って突っ込むだけだった」。滞空時間と高さで23歳年下の相手DFに競り勝つと、力強いヘディングでネットに突き刺した。ストライカーの力と技を詰め込んだ一撃。「非常に幸せな時間だった。FWはゴール、あの一瞬に懸けて勝負しているようなところがある。自分だけの時間ですから」。プロ30年目、年男の今季出場4試合目での初ゴールだった。

 試合前は不安を感じていた。体の張りが取れず今季最も疲労感が強かった。48歳。ピッチに立つだけでも驚きだが、年齢を言い訳にする気はない。「自分自身、今日が最後だというくらいの気持ちでいつもプレーしています。明日は体がどうなるか分かりませんから」。明るくエネルギーに満ちた男も、思うに任せない体と格闘しながらもがいている。これが48歳の現実だ。

 けがで出遅れた昨季は、ベンチ外が続いた。リーグ出場がたった2試合計4分間。それでもポジションを勝ち取ろうと練習から120%の力を出し続けた。夏場は72キロの体重が約1時間半の練習後、68キロに減った。「体重が減ると、練習中にクラクラしてくる」と悪影響を痛感。真夏の朝食後、温かいうどんを流し込むように食べることを日課にした。そうやって練習から戦って今がある。

 プロ30年間の積み重ね。その力でJ2首位の名門磐田から力でゴールを奪った。15歳で単身ブラジルに渡った当時は「街に1人で出て走っていたし、夜は照明のある砂浜にボールを持っていって練習した」。日本人サッカー選手の価値を王国に植え付け、今なお現役で歴史的なゴールを決めている。「次は自分のゴールで勝ちたい」。チームは2-0から逆転負けを食らった。悔しい敗戦に表情はさえなかった。新たな目標、次のゴールを狙いキングは勝負し続ける。【八反誠】