年間勝ち点トップの浦和が、MF柏木陽介(27)の活躍で仙台に完勝した。柏木は前半10分に先制のFK弾を決め、1-1の同37分には得意のパスで、MF武藤の勝ち越しゴールの起点になった。守備にも体を張りつつ、周囲の選手を指揮し、暑さ対策の効率よい試合運びも演出した。試合後には、今月上旬の東アジア杯に招集されながら、ケガのため辞退を余儀なくされた日本代表入りへの強い意欲も示した。

 前半10分。柏木はゴール正面20メートル地点から、FKを放った。左足で鋭い回転をかけたボールは、右のサイドネット内側を揺らした。「GKの位置も自分にとってはよかった。イメージ通り」。指を立てて、会心の一撃を自ら祝った。

 第1ステージ優勝の立役者は、今月上旬の東アジア杯の日本代表に選ばれた。3年ぶりの日の丸。その間に元来のパス精度に加え、試合の流れを見極める戦術眼、守備時の球際の強さが加わった。オレはやれる。自信があった。

 しかし大会直前の7月29日甲府戦で、不運にも左内転筋を負傷。それでも試合後には、翌30日早朝の代表の中国出発に備え、成田空港近くの宿舎に向かった。

 翌朝7時。まだ人もまばらな宿舎ロビー。チームの集合時間より1時間早く、柏木は姿を現した。代表の移動用スーツではなく、私物のスーツ。代表のドクターの見立ては「負傷のため辞退」だった。「オレが一番残念よね」。ポツリとつぶやき、タクシーで空港とは逆方向に消えていった。

 東アジア杯は心の傷口に塩を塗り込むよう、あえてテレビ中継で目に焼き付けた。組織だった攻撃ができず、苦しむ代表を見ながら、思いは強まった。オレならできる。オレにしかできないことがある。

 大会後、クラブでもケガの影響でFKを封印した。3戦目にしてようやく解禁すると、1本目でいきなり決めた。自らのドリブル突破で得たFK。「点がほしかった。いつもならパスを選ぶ。でも自分で仕掛ければ、あの位置でFKが取れるというイメージがあった」。いつも以上に、結果にこだわっていた。

 試合後、柏木は言葉に力を込めた。「試合運びも考えつつ、守備に体を張って、なおかつパスで攻撃を組み立てる。そういうタイプの選手は、今の代表には少ない。オレは代表でも活躍できる自信があります」。輝くプレーの後だけに、言葉には重みがあった。【塩畑大輔】