プレーオフ圏進出へ望みは捨てていない。J2札幌が金沢に勝ち、5月24日徳島戦以来5カ月ぶりの2連勝を飾った。1-1の後半32分、MF小野伸二(36)が2試合連続得点となる決勝弾を決め、四方田監督就任後初の連勝に貢献した。勝ち点を48に伸ばして順位を9位に上げ、残り6試合で6位長崎とは勝ち点5差。消えかけていたPOへの光が、再び輝きだした。

 小野のさわやかな笑顔が、赤黒の仲間に包まれ、もみくちゃになった。2戦連発は清水時代の11年8月20日C大阪戦以来、1512日ぶり。4日のアウェー東京V戦での1号は冷静にワントラップしてから流し込み「ゴールへのパス」と表現したが、ホーム1号は、ニアサイドに走り込み、左クロスをダイレクトでねじ込んだ。「いいボールが来たのでゴールに置いてくるだけ」。力はいらない。瞬時に相手DFとGKの位置を読み、2連勝に導いた。

 天才のイメージと指揮官の分析眼が合致した。「相手はゴール前に人数を割いてくる。サイドの深い位置からのショートクロスに合わせることを狙った」と四方田監督。小野は「あそこが空くといくのがスカウティングのポイント。練習通り」と振り返った。98年W杯フランス大会を経験した2つの頭脳がリンクした。

 13年11月、クラブは世界を知り影響力ある代表経験者を獲得しようと、小野ともう1人、海外クラブでプレー中のMFをリストに挙げ調査した。だが、小野は金銭面の条件提示前から「札幌をJ1に上げたい。サッカーで北海道を盛り上げたい」と強い意思を示した。その情熱がきっかけとなり、即一本化。クラブ幹部は「伸二は札幌でやりたいという気持ちが、一切ブレなかった」と話す。

 北海道には05年から何度も個人合宿を張り、練習後に洗濯を買って出てくれるファンもいた。世話になった人たちを楽しませたい-。通算12戦目で待望のホーム初得点を決めると、本拠サポーターが待つゴール裏へ一目散にかけ出し、胸のエンブレムをつかみ、喜びを分かち合った。

 2連勝でプレーオフ(PO)圏との勝ち点は5差に縮まった。「勝つことで一体感が生まれる。次の試合も点を取ることと勝ち点3を取ることを目指したい」。ケガに苦しんだ14年の分まで、残り6戦、フル回転で、奇跡のJ1へとけん引していく。【永野高輔】