INAC神戸MF澤穂希(37)は、引退表明後初戦となった皇后杯女子選手権準々決勝AS埼玉戦にフル出場し、勝利に貢献した。

 澤が、サッカー人生の生きざまを見せた。試合終了時には敵味方関係なく「澤コール」。日本女子サッカーの聖地を埋めた3666人を魅了した証しだった。「今日は心と体がしっかり準備できた。自分なりに泥臭さ、ひたむきさは出せたと思う」と笑った。

 引退が時期尚早と感じさせる攻守にわたっての奮闘ぶりだった。ボランチから積極的に攻撃参加。前半9分、DF近賀の先制点の起点となると、後半1分にはゴール前で体を投げ出してシュート。試合終了間際には角度のないところから右足を振った。惜しくも枠は外れたが「得点はもうちょっと後に残しているのかなと前向きにとらえています」と、23日の準決勝仙台戦(等々力)に持ち越し。守備でも献身的に相手の攻撃の芽をつみ、近賀が「澤さんが何人いるんだろうって思った」と表現するほどだった。

 大野が試合直前の円陣で「澤選手より走れ」と仲間を鼓舞した一戦。90分間一番走り続けたのは37歳の澤だった。【鎌田直秀】