浦和が途中出場のMF李忠成(30)の決勝弾で、柏との延長戦を制して9大会ぶりに決勝進出を果たした。今季は攻撃陣の厚い浦和で出番は限られたが、年末にかけて復調し、これで最近の公式戦5試合中4試合で得点。天皇杯では4回戦から3戦連発だ。来年元日の決勝では2連覇を目指すG大阪と対戦する。11年アジア杯で日本代表を優勝に導くスーパーボレーを決めた点取り屋が、浦和に待望のタイトルをもたらす。
延長後半12分。李は左サイドを突破するMF梅崎を遠めに見ながら、慎重に相手DFとの距離をはかっていた。「いいあんばいの間合いを保たないと」。梅崎が1度はDFに止められても、集中は切らさない。こぼれ球を拾って再度上げたクロスを、マークを完全に振り切って待った。
ヘディング一閃(いっせん)。ボールがネットを揺らした時には、李はすでにゴール裏スタンドに走っていた。赤いレプリカユニホームの群れが、歓呼の声で迎え入れた。「包み込まれたような感じがして、本当に気持ち良かった」としみじみと言った。
浦和に加入し2年目の今季は、前線にひしめくライバルにおされがちになった。FW興梠、新加入のMF武藤は日本代表入りを果たすほど活躍が光った。その中で李は先発の機会が減少。「なぜ自分はこのチームにいるのか」と、悩む日々が続いた。
転機は10月。ものの考え方、とらえ方を変えるトレーニングを始めた。以来、定期的にトレーナーと対話の時間を取る。どんな出来事にも、出会う人にも、必ず自分にとっての意味がある。たとえそれが「苦境」であっても。そう考えられるようになり、胸のつかえが下りたように気持ちがスッと前向きになった。
「受け入れてもらえていない」と感じていたサポーターとの距離感も変わった。厳しい意見も、高みを目指す上では意味がある。「自分から歩み寄ることも大事」と考えるようになれたこともあり、気持ちの整理がついた。
大事な場面でクラブを救う活躍。李は本当の意味で、浦和に溶け込んだ。決勝の相手はG大阪。昨季リーグ戦で逆転優勝を許し、今年のリーグチャンピオンシップでも敗れた因縁の相手。今回はタイトルを譲るつもりはない。今のチームには、本当の意味で「主軸」になった李がいる。【塩畑大輔】



