川崎FのFW小林悠(28)が3年連続の開幕戦ゴールを決めて波乱の幕開けを演出した。昨季王者の広島とのアウェー戦。後半39分、左サイドを崩したMF中野の折り返しに左足を合わせて均衡を破り、1-0の勝利をもたらした。開幕戦ゴールを決めながら故障に苦しんだ過去2年と決別。3年連続得点王のFW大久保の4年連続を止めるぐらいの意気込みで走り続ける。

 広島FW佐藤と川崎FのFW大久保のJ最多得点記録対決に注目が集まる中、試合を決めたのは開幕男の小林だった。後半39分。MF中野のグラウンダーのクロスに左足を合わせて均衡を破った。妻への感謝を込めて結婚指輪にキス。「今年も出ましたね(笑い)。2年連続で決めていたからいけるかなと思っていた。枠に入れることだけを考えて当てた。入ってよかったです」と、端正な顔をほころばせた。

 14年、15年と2年連続で開幕弾を決めたが、故障に泣いた。特に昨季は3月と5月に日本代表に招集されながら、肉離れと右膝半月板の手術で辞退。リーグ戦の出場は18試合にとどまった。“ガラスのエース”を脱するために「今年は年間通して試合に出られるように体のことを一番に考えたい」。練習開始の2時間半前にはクラブハウスに入ってトレーニングするなど入念な準備を続けている。

 昨オフにはG大阪など複数のクラブからオファーを受けたが「フロンターレでタイトルをとりたい」と残留した。司令塔のMF中村からは「嘉人と得点王を争って」とハッパをかけられ、「全試合に出られればゴールはついてくる。それ(得点王)ぐらいの気持ちでやれたら」と、強いリベンジの思いを持っている。

 前線から守備にも走り回り、試合中は大久保と「キツイですね」と励まし合っていたという。昨季の王者を撃破するスタートに「頑張って走って良かった」と笑い「今季はこのあと、ケガしないように気を付けます」と引き締めた。大久保と得点王を争い、クラブ創設20周年目を飾る初タイトルの獲得が目標。その先には不完全燃焼が続く日本代表への復帰が待っている。【岩田千代巳】

<小林悠アラカルト>

 ◆小麦粉断ちも 1987年(昭62)9月23日、東京都町田市生まれ。神奈川・麻布大渕野辺高-拓大(08年はJ2水戸の特別指定選手)-川崎F。177センチ、70キロ。食事の研究に興味があり、男子テニスのジョコビッチの本を読み、グルテンフリー(小麦粉を断つ)の食事を試したことも。

 ◆愛妻家 夫人と1歳の長男。ブログには管理栄養士の資格を持つ夫人の手料理の写真をアップする愛妻家。子煩悩で、キャンプ中に新米パパのDF車屋が手洗いとうがいを怠っていると「子供を触る前には、手洗いとうがい、この2つは基本」とピシャリ。

 ◆故障続き 14年3月、ザックジャパンに初招集も左内転筋を負傷して合宿への参加を辞退。14年10月、アギーレジャパンに招集されジャマイカ戦でデビュー。同11月は、代表練習中に左膝靱帯(じんたい)損傷で離脱。15年3月、ハリルホジッチ監督の初陣に招集されたが、直前の山形戦で負傷して辞退した。