J2札幌は筑波大(茨城)に3-0で勝利した。MF中原彰吾(22)のプロ初ゴールなどで4大会連続の初戦突破も、若手中心で臨んだ前半はミスを連発し、主導権を握れない時間が続いた。リーグ戦中断期間に行う天皇杯1、2回戦は出場機会が少ない選手のアピールチャンス。昇格争いの終盤を見据えた戦力底上げへ、課題の残る90分となった。

 札幌が今季、大事にしてきた試合の入りの部分で、甘さが出た。先発11人中、今季リーグ10戦以上出場しているのはDF櫛引、MF石井、FW上原の3人のみ。それ以外は、DF内山が今季公式戦初出場、MF中原、神田、DF永坂、GK阿波加が1試合。若手に経験を積ませるために組んだ布陣だったが、やってやろうという気概とは逆に、大学生相手に負けられないという力みから、ミスを連発した。

 奪っても敵にパス。切り替えが悪く、流れを引き寄せられなかった。前半37分、神田が思い切って放った29メートルのロングシュートがGKの頭越しに決まり先制も、主導権は握れないままハーフタイム。内山は「1対1で負けないように心がけたが、攻撃でのパスのつなぎ方とかまだまだ。ガチガチで自分の良さを出せなかった」と振り返った。

 幸運な形で入った1点と、後半11分にカウンターから上原がヘッドで2点目、余裕が出た同32分にCKから中原が3点目を取り勝った。だが四方田監督は若手のプレーを「彼らがトップの試合に出るには、もっと基準を高く考えている」と、あえて突き放した。

 勝負事にカテゴリーの上下は関係ない。後半36分から途中出場したMF小野はリーグ戦同様、的確なダイレクトパスをつなぎ完全に流れを変えた。「ボールをゆっくり持てるのは当たり前。リズムを変えるというのは、そういうもんじゃないからね」。札幌には最高の手本がいる。天才と同じプレーはできなくとも、姿勢から学ぶことができる。若手が、勝つためのエキスを貪欲に吸収することで、J1への道は、より近づいてくる。【永野高輔】