<ナビスコ杯:仙台1-0C大阪>◇29日◇1次リーグ◇A組◇長居

 仙台が2連勝を飾り、クラブ初の決勝トーナメント(T)進出に前進した。後半25分、MF高橋義希(24)が移籍&J1初ゴールとなる決勝点を奪い、2位に浮上。今季J2鳥栖からやってきた「控えめ」男がやっと実力を発揮、チームの一員となった。

 ゴールやや左、30メートル。高橋が右足でボールの中心を強くたたいた。得意のブレ球。不規則に揺れてGKキムの手を吹き飛ばし、ゴール右上に突き刺さった。「打った瞬間『正面に飛んじゃった』と思ったけど、うまくブレてくれた。仙台に来て、得点を決めて、勝てた。心の底から、うれしかった」と、はにかんだ。

 シャイな性格に苦しんできた。小中高時代、常に長野県選抜に入りながら「なじむまで時間がかかって、いつも自分を出せずに終わってた」。鳥栖時代もU-21、22代表に招集されながら、普段の力を出せず定着できなかった。

 今季加入の仙台でも本領発揮できなかったが、12日の決起集会が転機になった。全選手の前に立たされ「もっと自分を出そうぜ」と、照れながら決意表明。主催したFW平瀬は「普段は話さない(高橋)義希をイジり倒して、うち解けた。『ふてくされるのは簡単だぞ。能力はあるんだから気持ちを表に出すだけだ』と言った」。背中を押された高橋は4日後の山形戦で活躍。「やっとプレーに勢いが出た。分析でC大阪はミドルが有効な相手だったし、義希に期待していた」と手倉森浩HCは言った。

 この日もゴールを決めると、お祭り騒ぎになった。ピッチ上の仲間が次々と群がり、ベンチも飛び上がって喜んだ。能力は認められながらリーグ戦は12試合中10試合でベンチ外だった高橋が、殻を破ったからだ。誠監督も「みんな、ものすごく喜んでいた。いい光景だったね」と振り返った。

 同じ新加入のフェルナンジーニョ、太田、鎌田に続いて結果を出し「義希という武器を再確認できた」と監督。高橋も「出場機会が少なくて苦しかったけど、もっと頑張ろうと思った」と前を向いた。初の決勝Tへ、上昇気配で残り2戦を迎える。【木下淳】