磐田は16日、アウェー広島戦(午後3時=広島ビ)を迎える。ナビスコ杯決勝の前哨戦にもなる戦いに、日本代表から合流予定だったDF駒野友一(29)の姿はない。韓国戦に負った右上腕部骨骨折のため帰国翌日の14日、浜松市内で手術を受けた。上げ潮に乗るジュビロにはつらいニュースだが、盟友・前田遼一(29)は言った。コマの分まで-。イレブンの思いは同じだ。

 重傷を負った駒野の気持ちを代弁するように前田が口を開いた。「コマの分まで頑張りたいと思う」。プロ入り当時から世代別代表で一緒に戦ってきた。今回の韓国戦でもそろって先発に名を連ね、13日に肩を並べて帰国するはずだった。しかし、搭乗便は同じでも、駒野は車いすに乗り病院へ直行。前田は14日、1人でチームに合流し約1時間半の練習に気を吐いた。

 豊富な運動量と高速クロスでチャンスをつくる「クロス職人」と呼ばれる駒野の仕事ぶりは誰もが認める。守備でも「困ったら駒野に預ける」と絶大な信頼を受けていた。やはり痛すぎる職人不在…。

 が、一方で今の磐田には前田、駒野を欠いて臨んだナビスコ杯や天皇杯を勝ち上がった自信と、厚みを増した選手層がある。柳下監督は「代表のいないこの2試合で、フィールド選手16人使ってきた。それだけいい状態の選手が多い」と話している。

 中でも13日の天皇杯甲府戦で、右サイドバックに入り左足ミドルシュートで決勝点を挙げた山本康はしっかり「職人魂」を受け継ぐ。韓国戦はテレビで観戦。前半10分すぎに負傷シーンを見届けると「その瞬間から準備していた」。今後、シーズン終了まで代役が濃厚だが「コマさんは代えがきかない選手。でもけがをした人の分まで戦って安心してリハビリをしてもらいたい」と奮起を誓った。

 守護神も戻ってくる。右内転筋痛で最近2試合欠場していた川口は「足は大丈夫。自分としては蹴られる状態。まずは、コマを安心させるためにもリーグで勝ちたい」と復帰を熱望。職人の離脱でチームはさらに1つにまとまろうとしている。それも駒野の力だ。【栗田成芳】