札幌の新加入FW前田俊介(25)が、開幕スタメンに照準を定めた。熊本合宿5日目の16日、初めて行われた紅白戦で主力組のワントップに起用。1ゴールを含む2得点に絡み、19日のプレシーズンマッチ北九州戦(北九州市本城陸上競技場)での先発の可能性が高まった。開幕磐田戦の定位置争いでも1歩リード。希代のテクニシャンが、新天地でFWとしての才能を開花させる。

 ボールを持つと何かが起きる。グアム、熊本合宿を通じて初の紅白戦。前田は主力組のワントップで起用されると、まずは中盤で起点となって、FW内村のゴールを演出した。パスで崩した後はドリブル突破だ。DF2人をかわして名刺代わりのゴールを決めた。「みんなとしゃべっているので、コンビネーションは問題ない」と話していた通り、30分で2得点に絡み、株を上げた。

 以前からFWの軸として期待されていた。それでも試合にならないと分からない部分があり、この日の紅白戦で真価を見極めるつもりだった。それが想像以上の活躍。石崎監督は「(前田は)いいしょ。わしの目に狂いはなかった。自由にやらせているよ。何の要求もしていない」と手放しでたたえた。19日の北九州戦の先発もこれでほぼ手中に収めた。

 所属していた広島、大分、東京ではレギュラー定着に届かなかった。石崎監督にその能力を買われ、移籍4チーム目でたどり着いたのが札幌だった。技術がありながらも運動量不足で、プレーにもムラがあるとの周囲の評価を覆すのに必死だった。厳しいフィジカルメニューが課されたグアム合宿を皆勤賞で乗り切った。「キャンプをやりきれば、自分もワンランク上にいける」。自らを追い込み、生まれ変わった姿を誇示した。

 前田という触媒を通した化学反応で、チームは格段にレベルアップした。トップ下でコンビを組む内村は「やりやすい。ためをつくれるし、持てるので、みんなでうまくあいつを使えば」と手応えを感じている。前田によって周囲も生き、攻撃の選択肢は確実に広がった。

 北九州戦で好プレーを持続させれば、開幕先発も一気に現実味を帯びてくる。「これからもしっかり練習して、100%の状態に持っていけるようにしたい」。未完の大器のままで終わるつもりはない。ゴールへの道筋は前田がつくる。【小林明央】