<J1:清水1-1鳥栖>◇第15節◇23日◇アウスタ

 きっかけの999ゴール目になってほしい。清水が前半25分にFW大前元紀(22)のゴールによる4試合ぶりの得点で先制したが、後半11分に追いつかれ5戦白星から遠ざかり7位に後退した。

 欲しくてたまらなかった4戦ぶりのゴールが意外な形で舞い込んだ。前半24分、FW高木のクロスからこぼれ球に、MF杉山の競り合ったボールが相手のハンドを誘い、PKを獲得した。キッカーはFW大前。ゆっくり助走をとる。きっちり自分の間合いを保ち、ゴール左隅へ丁寧に流し込んだ。決して派手なゴールではない。5戦ぶりの白星に向けて先制点を執念でもぎ取った。チーム通算999ゴール目の1発だった。

 しかし、結果は無情だった。この1点が勝利に結びつくことはなかった。後半11分。左サイドを崩され、GK林が飛び出すと、最後はクロスを押し込まれ、同点とされた。アフシン・ゴトビ監督(48)は「選手たちの勝ちたい気持ちが強すぎて、本来の我々のサッカーが、およそ75分間できなかった」。

 つかみかけた「運」もこぼれ落ちていった。駆けつけた1万7696人のサポーターから「ゴール!!

 ゴール!!」の大声援を受け、FW大前、途中出場のFWアレックスやMF小野。全員で決勝点、そして通算1000ゴールへと向かった。それでも、ゴールネットが揺れることはなかった。

 スタジアムに響き渡っていた声援は、試合後、大ブーイングへと変わった。ただ、今季公式戦9戦無敗のホームで負けはしなかった。閉ざされていた「1点」が生まれたことも事実。ゴトビ監督は「残り15分は、興味深いものになった。我々は良いチームだが、こういう時期もある。苦しい時を乗り越えていきたい」と、必死に前を向いた。この1点を、再び上位に向かう力に変えていくしかない。【前田和哉】