Jリーグ史上初の無観客試合として開催される浦和-清水戦は今日23日午後3時から埼玉スタジアムで行われる。浦和は22日、さいたま市の大原グラウンドで通常通りの練習。練習前のミーティングに淵田敬三社長(59)が参加し「新生レッズの第1歩だ」などと異例の訓示。選手らは逆境をはね返そうと意気込んだ。会場には広告看板の代わりに「SPORTS

 FOR

 PEACE!」(スポーツで平和を)の文字が浮かぶLED型看板が設置された。

 練習開始の1時間前の午後1時30分、淵田社長がクラブハウスに到着した。そのままミーティングに参加し選手、スタッフらに約10分間の訓示を行った。「周囲が騒いでいる中で戦ってもらうのは心苦しい」と騒動をわびた上で「この難局を一丸となって乗り切ろう。新生浦和レッズの第1歩にしよう」と結束を呼び掛けた。淵田社長がクラブハウスを訪れることはあるが、ミーティングで発言するのは異例。それだけ事態を重く受け止めている。

 練習後、ペトロビッチ監督は約200人のサポーターに近寄り、ネット越しに握手をして声援を受けた。「6万人が入るスタジアムで無観客というのは想像できない」と戸惑いつつ「サポーターとより強い絆で結ばれるよう、試合はベターなものにしなければならない。難しい状況の時こそ、結束を強め、生まれ変わるチャンスでもある」。ピンチを乗り越えることで成長できると前向きだった。

 サポーターが差別的な横断幕を掲げて無観客試合となったことを受けて、試合前にはMF阿部勇樹主将(32)が「差別撲滅」のスピーチを行うことも決まった。選手代表の立場からサポーターらにクラブの姿勢を訴えかけるとみられる。ピッチ脇などにあるLED型広告には、浦和が取り組んでいる活動の標語「SPORTS

 FOR

 PEACE!」の文字を流す。

 この日夕方までに、会場外の一部にはプラスチック製の柵が置かれ、最寄りの浦和美園駅からつながる広場の柵には「来場お断り」を告知する張り紙がされるなど準備は整った。6万人以上収容のスタジアムに、選手らの声だけが響く無機質な空間が広がる。午後3時、国内では前例のない試合が幕を開ける。【高橋悟史】