<J1:柏4-1川崎F>◇第18節◇2日◇柏

 交代後、ピッチに向かって深々と一礼した。柏DF藤田優人(28)にとって、273日ぶりの出場だった。昨年11月2日のナビスコ杯決勝で右膝前十字靱帯(じんたい)を損傷。復帰戦で後半34分までプレーして、1得点を挙げた。大歓声を背に特別な思いをかみしめた。

 けがして1カ月は足がまったく動かなかった。「本当にこんなんでサッカーができるのか」。怖さも口にしていたが順調に回復し、5月に練習復帰した。「サッカーをしたい気持ちをプレーで表現しようと思った」。開始早々に激しいプレーでチームに活を入れ、1-1の後半17分には、右足アウトサイドで勝ち越しのミドルシュート。黄色で埋め尽くされたスタンドに飛び込み、支えてくれた家族に向かって左胸のエンブレムを何度もたたいた。

 刺激も受けた。日本代表DF長友は明大時代のチームメートだ。当時は毎日のように銭湯や定食屋に通い、走り比べをした仲間から「お前なら戻ってこられる」と激励された。リハビリに精を出し、体重は変わらず75キロも、筋肉は2キロ増えた。

 後半は足がつって交代。長崎・国見高の先輩、大久保から「(高校時代に走っていた)狸山に走りに行くか」と突っ込まれた。復帰弾でリーグ再開後初勝利に花を添えたが「出来過ぎです。80分でバテてちゃダメですね。鍛え直さないと」。疲労感の中に、充実の笑顔を見せた。【桑原亮】