J2で3位と苦戦する磐田が、シャムスカ監督(48)を解任したことが24日、明らかになった。近日中に発表される。昨年、J2に降格した磐田は1年でのJ1復帰を目指して同監督を招聘(しょうへい)したが、前日23日には18位の水戸に惨敗し、首位の湘南のJ1昇格が確定していた。同監督の解任に伴い、クラブは水面下で次期監督の人事に着手。名門再建を託す最有力候補として、黄金期を築いたOBの名波浩氏(41)に複数年契約を打診した。

 今季、J2優勝とJ1昇格を掲げてきた磐田が、シャムスカ監督解任の決断を下した。湘南の昇格がいち早く決まり、磐田の優勝が消滅しただけではなく、2位松本との勝ち点差は残り9試合で8。J1自動昇格圏(2位以内)も厳しい。23日には下位水戸に1-4で惨敗し、プレーオフが現実味を帯びてきた。

 加藤久GMはこの日「今、中途半端な答えはしないが、私なりの考えはある。結果の責任は監督にある。判断しなくてはいけない時はします」と、決断内容には明言を避けるも、解任については肯定も否定もしなかった。

 複数の関係者によると、クラブ幹部からシャムスカ監督への解任は通告済み。さらに、次期監督の人選では、ジュビロの黄金期を築いた名波氏に接触を開始。名波氏には複数年契約を提示しているとみられ、今季の結果に関係なく、長期的ビジョンでクラブの再建を託す。

 クラブはJ2降格した昨季、「監督経験者」を第一に人選を進め、大分でJリーグ経験があるシャムスカ氏に今季を託した。就任直後は「チーム=ファミリー」をモットーに、コミュニケーションを重視した明るいチームへと変化して行った。開幕戦は黒星スタートも、前半を勝ち点43の2位で折り返す。

 しかし、軸となる戦術が希薄で、各クラブとの対戦が2巡目に入る後半戦は、12試合で勝ち点13(3勝5敗4分け)と大失速。戦術を3バックに変更した直後に、再び4バックに戻すなど、迷走も始まり、選手起用も定まらず、次第に現場での求心力を失っていった。最近では、監督への不満も漏れ始め「チーム=ファミリー」のモットーは崩れ始めていた。

 当初クラブは、次期監督候補の条件として「監督経験者」を第一に考えたが、危機的な状況を深く認識。救世主として、今でも深いジュビロ愛を口にする名波氏に白羽の矢を立てた。

 現在、チームには名波氏とともに黄金期を築いた鈴木秀人氏がコーチ、服部年宏氏が強化部長として在籍しており、名波氏の手腕を発揮する環境は整っている。クラブ幹部は「ユースの育成を含めると立て直すのには5年かかる」と、抜本的な改革を目指す。

 次節28日のホーム愛媛戦は、解任したシャムスカ監督に代わり、暫定監督で臨む可能性もある。今後、名波氏との交渉が正式にまとまり次第、名波新監督の下、名門が再スタートを切ることになる。

 ◆名波浩(ななみ・ひろし)1972年(昭47)11月28日、静岡県藤枝市生まれ。清水商で88年全国選手権優勝、順大で93年総理大臣杯優勝。95年、J10クラブからオファーを受け磐田に加入し、ルーキーで開幕戦デビュー。99年6月セリエAベネチアにレンタル移籍し、00年、シーズン途中で磐田に復帰。06年にC大阪、07年に東京Vを経て08年に磐田に再度復帰し同年引退。98年W杯など、国際Aマッチ通算67試合9得点。