【ミラノ(イタリア)17日=八反誠、波平千種通信員】ACミランの日本代表MF本田圭佑(27)がミラノ市内で日刊スポーツのインタビューに応じた。

 加入から約3カ月が経過。7日ジェノア戦では待望のセリエA初ゴールを決めた。これまでかたくなに口を閉ざしてきた背番号10から語られたのは、得点、アシストへのこだわりを上回る、名門再建への強い使命感―。進化を続け、かつ変化も恐れない真の本田圭佑像に迫る。

 ──ミランに入って3カ月がたった。入団会見の時に思い描いていたミランと、入団してからのミラン。どう違う

 想像していたプレッシャーの中で毎試合戦わなければいけないというのはサッカー選手としては大きな喜びだと思いましたね。その中でなかなか点が取れなかったというのは自分の中でもネックになっていた。ようやく点というものにもたどり着くことができた。点を取る前と取った後ではチームメートからの信頼が大きく変わったと感じます。

 ──どこが変わったのか

 彼らはそうは言わないけど、やっぱりなめられている。細かいニュアンスからそう感じている。日本人としてはやはり悔しいわけで、どうしたら周りの反応が変わるのかといったら、やはり得点しかない。特に攻撃の選手はアシストか得点。目に見える結果を出して周りの反応が変わる。得点の後で変わった。自分への声掛けだけでも変化がありました。

 ──ミランにおいて得点で自分の立場を変えるというより、ミランをどう変えたい、どうしたいのか、何を成し遂げたいか。そのあたりを説明してほしい

 ここに来たのは自分が得点するためやアシストするためではない。いかにして不調だったミランを再建するかというタスク(課せられた仕事)になるだろうということを分かった上で移籍してきました。自分にはそれができるだろう、そういう重圧にも耐えて乗り切れるだろうと。むしろ自分の力を試したいという思いもありました。

 その1つ1つの作業をクリアして、大きくミランを変えるための痛みを伴う段階にいます。監督も代わりましたしサッカーが大きく変わった。非常に難しい段階ではあるんですけど、今は4連勝と結果は出ています。内容はまだまだ時間がかかるかなという印象ですけど、監督を中心にチームは我慢しながらいいサッカーに向かおうとしている段階なのかなと思います。

 このチームは今までと違ってスター選手が多い。その中で、自分1人の力がどこまでチームに影響しているのか分からないですけれど、その中でも今までと同じように大きくチームを変えたい。自分の力で。どこまでできるかというのは楽しみたいと思っています。

 ──ミランのエンブレムに「1899」という創設年がある。1世紀以上の歴史ある名門クラブで歴史を塗り替えられる立場にいる

 ミランにとって、非常に難しい時期であると思います。サポーターは現状を受け入れられないと思います。ただ、本当にこの状況を乗り越えたいのであれば、やはり過去の栄光を捨てるべきだと思います。

 前と同じシチュエーションはやってこないわけで、新しいミランを作っていく必要がある。メンバーも違いますし経済状況も違う。組織が生まれ変わるために、1人1人がやることをやる、それしかないです。

 ──「過去を捨てる」と言った。この点はトップ下で起用されない本田圭佑と似ているようにも感じる。今まですべてを求めて勝ち取ってきたようにまたトップ下を勝ち取るのか?

 右サイドの本田圭佑を新たに勝ち取る、このチャレンジにこそ価値があると思うのだが

 トップ下をやれていない現状には少なからず満足はしていない。自分にはトップ下がふさわしいと今でも思っています。その話はセードルフとは、今でも継続しています。

 ただ、彼は「右でできる。右でできるクオリティーがある」と。彼なりの意見で右でやることを説得してくれている。それを理解はしているので、自分が与えられている右のポジションでいかにチームに貢献できるのかということを最優先に考えています。

 ですので、トップ下でプレーすることは現時点では二の次です。右からでも中に入ってプレーすることも可能ですし、今までと違った景色でプレーするという新しい充実感はあります。

 状況が変われば僕がトップ下をやる可能性だってある。当然そこにこだわり続ける必要はあると思っています。ただプライオリティー(優先順位)は1番目ではない。そのためにサッカーをやっているわけではない。右でも人々を魅了することは可能だと思います。

 ──セードルフ監督とは信頼というひと言では語れない、何か強い絆があるような気がする

 どうですかね?

 すごく強い意志を持って選手に語りかけます。僕に限ってではなくマリオ(バロテリ)に対しても妥協は許さない。誰に対しても平等に厳しく接する。時にはフレンドリーに声をかける。現時点では監督としての経験がまだ少ないので、みんなにとっての大先輩という部分もあるんですけど、それでも誰より勝者のメンタリティーを持っている人ですから選手はみんな黙ってついていっている。

 「黙って」というのは語弊があるかもしれません。意見は言いますが、最終的なところは彼の強い思いにみんな理解を示している。僕も右でもチームのためにやれるんじゃないかという考えに至れているところは、彼の器によるところが大きいと思います。

 ──イタリアの新聞は読まないかもしれないが、容赦なくたたかれている。厳しいイタリアのメディアをどう捉えているのか

 楽しんでます。イタリアのメディアはこういう風に批判するんだと。批判の仕方が違うだけで日本のメディアとそう変わらないと思います。選手である以上、結果を求められるのは当然ですから。前にガゼッタ(・デロ・スポルト紙)の取材でも答えましたけど、みなさんが興味があるのは結果だと思いますし、そこから選手が目をそむけてはいけないと思います。

 みなさんの仕事も理解してます。なおかつ僕はそのおかげで強くなってこれました。いつか言った「批判をしてくれている人にも感謝をしたい」というのは、そういう意味で言ったんですけど。ただ、気持ちいいものではないですね。それだけは伝えておきます(笑い)。