【バルセロナ(スペイン)26日=益子浩一】カテナチオの国から世界一への道を歩む-。セリエAの名門ラツィオへの移籍が秒読み段階に入った日本代表のMF本田圭佑(25=CSKAモスクワ)が、初めて胸中を明かした。ラツィオ移籍を第一に考えていることを明かし、交渉が大詰めに入っていることを認めた上で、守備重視のイタリアで成功することが世界一への近道だという持論を熱く語った。欧州の冬季移籍市場は31日に閉まるため、正式決定後すぐに本拠地ローマへ渡る。

 本田が固い口を開いた。この日、バルセロナ市内の室内施設で、昨年9月に手術した右膝のリハビリをこなした。朝からみっちり3時間。昼すぎに私服に着替えて施設から出てくると、名門ラツィオ移籍への思いを包み隠さず、ひと言、ひと言を丁寧に語り出した。

 「ラツィオに行くことを前向きに考えているのは事実です。今はクラブ間で最後のツメの交渉をしている。ただ現時点でクラブ間も、ラツィオとオレ個人の間でも、正式に合意するまでには至っていない。ウインドー(冬季移籍市場)が閉まる最後の1時間まで、何が起きるか分からないのがこの世界だから」

 なぜイタリアを選ぶのか。当初はバルセロナに代表されるように、攻撃力が特徴で世界最高峰と呼ばれるスペインリーグへの強い思いがあった。守備重視のセリエAへの移籍は、当初の本田の思惑とは真逆といってもいい。だがそこには本田流の考えがあった。

 「今はイタリアは世界一のリーグとは言えなくなった。レベルも昔に比べたら、落ちたと思う。でもイタリアは今でも世界一、成功するのが難しいリーグではあると思う。守備があれだけ堅くて、成功するのは難しい。オレ自身、そこにチャレンジしたいという思いが芽生え始めている」

 10年W杯南アフリカ大会の直前には「世界一」を公言しながら、誰も信じる者はいなかった。今月にメッシ(バルセロナ)が3年連続のバロンドールを獲得した際にも「オレの中では真剣に悔しい」とも言った。だが誰も勝利を信じなかったW杯では2得点を挙げ、日本を世界16強へ導いた。今回の移籍でも日本だけでなく、欧州中が本田の動向に注目している。堅守のカテナチオの国で本田の攻撃力が通用すればまた1歩、世界一へ近づく。そんな真摯(しんし)な思いがあった。

 秒読みに入った移籍交渉とともに、復帰への階段も順調に歩んでいる。この日は右膝に超音波を当てる治療から始まり、強い負荷を加えるトレーニングをこなした。リハビリの合間にもトレーニング機器に乗り、大量の汗を流しながら3時間、体を動かし続けた。昨年末から続く孤独なリハビリに耐え、復帰は近づいてきている。

 ラツィオとの交渉が正式にまとまれば、すぐにローマへ渡ることになる。オランダのVVVから欧州への挑戦が始まり、極寒のモスクワを経てイタリアへ。日本のエースは1歩、1歩、確実に世界一への道を刻む。

 ◆ラツィオ

 1900年創設。本拠地はローマのオリンピコ・スタジアム。リーグ制覇2回、イタリア杯5度優勝。過去に元イングランド代表MFガスコインや現マンチェスターCのマンチーニ監督らがプレー。今季からドイツ代表FWクローゼが加入した。エドアルド・レヤ監督。チームカラーはスカイブルー。昨季はリーグ5位で今季は現時点で勝ち点33の5位。