<ブンデスリーガ:ドルトムント3-1フライブルク>◇13日◇ドルトムント

 マンチェスターUからドルトムントに復帰したMF香川真司(25)が古巣でよみがえった。復帰後初戦となるフライブルク戦にトップ下で先発。前半41分に右足でうれしい初ゴールを決めた。12年4月以来となるブンデスリーガでの得点で、不遇だったマンU時代におさらばだ!

 ガッツポーズはちょっぴり控えめだった。香川は前半41分に復帰後初ゴールを決めると、軽くジャンプして、小さく右拳を突き上げた。そして着地後、ぺろっと舌を出した。かつてのチームのアイドルが少し照れたような表情を見せると、満員に膨れたスタンドは大興奮。「お帰り!」とばかりに大声援で香川を祝福した。

 3シーズンぶりの古巣で、水を得た魚のように動き回った。マンチェスターU時代には考えられないほど、ゴール前に姿を見せた。得点シーンも前回所属時そのものの完璧な連係。カウンター攻撃からMFグロスクロイツが持ち上がり、右サイドのラモスへはたく。ラモスが中央へクロスを入れると、ゴール前のムヒタリャンがわざと空振りしてスルーし、反対側からつめた香川が右足で蹴り込んだ。

 香川はスルーパスで先制点の起点にもなり、2点に絡む活躍を見せた。それでもガッツポーズと同様に、試合後のコメントも控えめだった。「結果を残せたのは良かったですけど、チームが勝てたことが何より大事。今日はあくまで僕のゲームではなく、チームの戦いですから」。その言葉に、少しでも早く古巣の空気に再びなじみたいという気持ちが表れた。

 ドルトムントは当初、香川には徐々に時間を与えて慣れさせる方針だった。だがドイツ代表MFロイスや、ポーランド代表MFブワシュチコフスキら故障者が出たため、この日からフル回転が求められることになった。後半19分には右足がつり、スタッフに寄り添われながら苦笑いでピッチを後にした。「90分間プレーしていなかったから、後半足にきた。もっと、そういう部分で上げていかないと」。それでもスタンドからは割れんばかりの拍手が巻き起こった。

 マンUでは、フィジカルを重視する監督たちのもと、どれだけアピールしても信頼を得るまでにはいたらなかった。指揮官がコロコロ代わる不運にも見舞われた。ついにはクラブでの不調が代表でのスランプにもつながった。W杯ブラジル大会では、3試合無得点。ゴールできなかったどころか、ギリシャ戦でスタメンを外れるなど、フル出場すらなく、1次リーグ敗退の戦犯とされた。

 それだけに巻き返しを誓う気持ちは強い。「今日は緊張からくるものなのか分からなかったが、体はちょっと重かった。1、2点入って気持ちは楽になった。試合を重ねれば連係はもっと良くなる」。この日の活躍は、今後の復活への確かなのろしだった。【鈴木智貴通信員】

 ◆香川の苦闘

 ドルトムントでの2シーズンで21点、9アシストと活躍し、チームの2連覇に貢献した香川だったが、12-13年シーズンにマンチェスターUに移籍すると、レギュラーに定着することができずに出場機会が激減。それでも同シーズンでは13年3月のノリッジ戦でハットトリックを決めるなど計6得点と意地を見せたが、昨季はモイズ監督から完全に控え扱いされ、欧州移籍後初めて無得点に終わった。今季はファンハール新監督のもと、本来のトップ下では3番手以下の扱いで、守備的MFとしても「失格」のレッテルを貼られた。そのため、出場機会を求めてドルトムント復帰を決断した。