松永大介(20=東洋大)が、自己新の1時間18分53秒で優勝して初の五輪を決めた。最終選考会で独歩のまま押し切りゴール。日本陸連の派遣設定記録1時間20分12秒を突破しての優勝で代表に内定した。代表3枠は2月の日本選手権を制した高橋英輝(23=富士通)と松永が内定。最後の1枠はベテランの藤沢勇(28=ALSOK)が有力となった。

 最後までフォームが乱れなかった。松永は2位西塔に51秒差をつけて独歩で優勝。右手を振り上げると泣いた。「ラスト1キロから泣きそうで。涙をこらえられなかった」。2月の日本選手権はラスト500メートルで歩型違反により失格。「競歩をやめたいと思った。この1カ月は不安だった」というどん底から立て直した。自己記録を15秒更新する日本歴代4位の好タイムを出して「リオで金メダルを目指して頑張りたい」。

 失格を糧にしてきた。横浜高2年の高校総体(岩手)5000メートル。2000メートル付近で後続に左足のかかとを踏まれて靴が脱げた。「取りに戻ろうかと思ったけど、決勝だったので」と靴下のままレースを続行。高校時代の恩師、田下正則教諭(52)は「40度近い気温でトラックもやけていた」。残り3000メートルで“火渡り”のような苦行に耐えてトップでゴール。しかし直後にロス・オブ・コンタクト(両足が同時に空中に浮く反則)もあって失格となり、号泣した。足の裏は水ぶくれで、包帯でぐるぐる巻きになった。それでも「負けず嫌いなんです」と精進し、14年世界ジュニア選手権で日本人初の金もつかんだ。

 世界記録保持者の鈴木雄介が不在の中で、大学3年生の20歳がリオ切符を手にした。東洋大には1学年下に男子100メートルの桐生がいる。「桐生よりも先に決めて、これでドヤ顔ができます」。ももいろクローバーZの高城れに(22)が好きという今どきの20歳は、東京五輪での活躍も期待できる逸材だ。【益田一弘】

 ◆松永大介(まつなが・だいすけ)1995年(平7)3月24日、横浜市生まれ。横浜高1年で競歩を始めて東洋大に進学。14年世界ジュニア選手権1万メートルで優勝(同選手権で日本人初の金メダル)し、日本陸連の新人賞を受賞。昨年のユニバーシアード男子20キロ競歩は銅メダル。174センチ、61キロ。

 ◆選考過程 男子20キロはすべての選考会が終了した。2月の日本選手権で優勝した高橋と松永が内定。残り1枠は2月の同選手権2位の藤沢(1時間18分45秒)とこの日2位の西塔(1時間19分44秒)が争う。日本陸連の今村競歩部長は「2つの選考レースを見比べてもらえれば」と話しており、タイムが1分近く速い藤沢が選ばれる見通し。代表は4月18日に原案策定委員会が開かれ、翌19日に発表される。