関東学生連合の照井明人(東京国際大4年)が、10区で“幻の区間賞”となった。関東学生連合はオープン参加のため参考記録となるが、1時間10分58秒の快走。区間賞だった順大・作田直也(4年)の1時間11分0秒を2秒上回った。昨年は東京国際大の3区を務めて区間13位。2年前の冬、青学大や東洋大に“出稽古”して、学んだ教訓を糧に成長し、オープン参加で初となる区間1位の快挙を達成した。

 青学大の独走優勝ムードが漂う10区。その最後方から価値ある“幻の区間賞”が生まれた。照井は一斉スタートで走り始めた。10キロ付近。運営管理車に乗る東京国際大・大志田監督から声が飛んだ。「(区間トップより)30秒速いぞ!」。勢いは衰えることなく、フィニッシュテープを切った。予選15位で箱根路にチームで立てなかった男の刻んだタイムは1時間10分58秒。参考記録だが、10区を走った21人の中で最速。オープン参加での区間1位は初だった。

 照井 奇跡。区間記録を狙っていたけど、本当に取れるとは思ってなかった。予選会に落ちた悔しさを出せました。

 箱根で伝統校、強豪校を倒すべく東京国際大に進んだ。その志は絶たれたものの、仲間から託されたマスク、薬などを持参して箱根に臨み、個人で最後に強烈な印象を残した。記録には残らない。「そういうルール。(記録が)あったらいいんですけど」と苦笑いしながら、本音ももらした。

 2年前の冬。青学大と東洋大の合宿にチームメートと短期的に参加した。練習への意欲、質、睡眠、食事。すべての面で差を痛感させられた半面、最高の教科書にもなった。その経験を自分の大学に持ち帰った。

 まず青学大の「目標達成シート」を導入した。月に1度、目標を設定。実行計画、目標達成に不足したことを具体的に記した。それを選手の前で発表。目標達成シートは寮の玄関に張った。課題を明確にした。

 4年で主将になると、ペース走も東洋大の基準にした。これまでは20キロを1キロ3分20秒前後だった。ただ東洋大が3分5秒でやっていると知ると、妥協しなかった。取り入れたものの、自分もきつい。ただ意地があった。「背中で引っ張ってペースをつくろう」と無理もした。すると知らぬ間に「スピードもスタミナもついた」。大学2年時、1万メートル自己記録は29分27秒53。昨年11月の記録会では29分6秒8。飛躍的に成長した。

 卒業後は、今年の全日本実業団駅伝にも出場したNDソフトで競技を続ける。「東京五輪はマラソンで出たい」。今度は記録に名を刻むべく、次なる歩みを進む。【上田悠太】

 ◆照井明人(てるい・あきと)1994年(平6)5月11日、岩手・北上市生まれ。北上中では陸上もやりながら野球部にも所属し投手と遊撃手。専大北上高から陸上に専念し、高3では高校総体は5000メートル東北予選で敗れる。好きな芸能人は有田哲平。168センチ、54キロ。

 ◆関東学生連合 箱根駅伝に出場できない選手に機会を与えるため、03年大会から結成。名称は関東学連選抜で、現在の名称は15年から。03~06年は個人の区間記録のみ公認。07年以降は正式参加で順位もついたが、15年から記録も順位もつかないオープン参加となった。14年は編成なし。予選会で出場権を得られなかった大学から、個人成績が上位の選手が選ばれる。