青学大陸上部の原晋監督(49)が4日、日本マラソン界の低迷打破へ、5カ条の改革案をぶち上げた。東京箱根間往復大学駅伝で、史上初の3連覇&大学駅伝3冠達成から一夜明けた4日、都内で日刊スポーツの取材に応えた。ランキング制導入、指導者の情報共有化など、あふれるアイデアを披露した。自らを「劇薬」と称する陸上界の異端児だが、改革論は過激ではなく、合理的だった。

 V3&3冠の喜びもつかの間、原監督は低迷久しいマラソン界の改革への思いを吐き出した。

 (1)ランキング制の導入

 代表選考会はG1、次はG2と格付けする。マラソン、ハーフ、1万、5000メートルの入賞者にポイントを付与。その年間ポイントで強化費を振り分け、ランキングもつくる。

 原監督 選考会1度きりの走りでは、真の実力は分からない。ポイント制の数値化を図ることで、誰が本当に強いかを、客観的に把握できる。

 (2)情報共有

 全国高校、箱根、全日本大学、ニューイヤー駅伝の過去5年の優勝監督を一堂に集める。ノウハウを共有する。

 原監督 今年の箱根駅伝の10区でトップの記録を出した関東学生連合の照井選手(東京国際大4年)は2年前に、うちの合宿に参加している。練習のやり方を学んで結果を出した。情報を共有化し、良いものはどんどん取り入れれば、結果的に陸上界が盛り上がる。五輪メダルを多数獲得する水泳界では、とっくの昔にそんな取り組みをしていると聞く。敵はケニアであり海外選手。ノウハウを出し惜しみし、国内で足の引っ張り合いをしている場合ではない。

 (3)ニューイヤー駅伝、日本選手権のショーアップ

 原監督 箱根駅伝が人気の頂点では競技の発展はない。注目度が箱根より下がるニューイヤー、閑古鳥の鳴く日本選手権では、将来の夢がない。高校野球の先にはプロ野球、メジャーがあるように、日本陸連は箱根の先の夢舞台をしっかり用意するべき。積極的な仕掛けでショーアップし、輝く最高峰の場を構築する必要がある。

 (4)実業団の移籍自由化

 原監督 移籍のはんこをもらえず、飼い殺しにされる選手が少なくない。指導者との相性はある。アスリートファーストの観点からも自由化を推進する。

 (5)ゼッケン広告の拡大

 原監督 近年は大会スポンサーの関係で、所属企業の広告が小さい。昔のように大きくすれば、マラソン挑戦への後押しにもなる。

 5カ条の改革案。原監督は「まずは当たり前のことをやることです」と言う。異端児の提言は決して過激ではなかった。【田口潤】

 ◆五輪競技のランキング制 卓球、バドミントンなどは世界ランクが五輪代表の選考対象になっている。近年にランキング制を導入したのは柔道。国際柔道連盟(IJF)が選手の実力を数値化するため09年にポイント制度を取り入れた。大会を格付けし、それに応じた得点が与えられる。ランキングは大会でのシード順などに使われ、五輪出場権にも影響する。