<東京マラソン>◇26日◇東京都庁前-東京ビッグサイト(42・195キロ)

 五輪切符が期待された公務員ランナーの川内優輝(24=埼玉県庁)は、前半の給水ミスが響き、まさかの14位に沈んだ。5キロ、10キロと連続してボトルを見失った。ようやく15キロ地点で手にしたが、精神的なダメージは大きかった。走りのリズムが崩れ、表情がゆがむ。23・7キロで集団から離れると、いつもの粘り強さは見えず、ズルズル後退。舌戦を繰り広げたライバル藤原新(30=東京陸協)に5分以上も遅れて、2時間12分51秒の記録でゴール。精根尽き果て、地面に倒れ込んだ。

 川内

 同じようなボトルが並んでいて分からなかった。目が悪くなったこともあり、見えなかった。気持ちを切り替えればよかったが、動揺してしまった。

 初歩的なミスだった。埼玉県のマスコット「コバトン」のシールをボトルに貼った。その目印が裏になって置かれていた。「もっと目立つようにしておけば」。動揺が走りのリズムを狂わせ、20キロ過ぎには両足の親指、人さし指の裏に血豆ができた。沿道の声援に背中を押されたが、本来の走りはできなかった。気丈に会見に出席した川内だったが、自然と目は潤んだ。

 川内

 今回の結果から選ばれるとは思っていません。びわ湖でも6分台、7分台といういい記録が出ると信じている。そういう選手が日本代表として行ってくれる。自分は未熟というか実力不足、情けない。

 日本陸連の坂口男子マラソン部長は「走れることもあれば、走れないこともある。(昨年の東京での)2時間8分37秒で力は証明している」と思いやったが、川内にとっては勝負をかけたレースでの惨敗だ。五輪対策として4月下旬のドイツ・デュッセルドルフの大会にもエントリーしている。だが「五輪」の文字は頭からは消去した。福岡の結果を踏まえ、回避する選択もある中、異例となる2度目の選考レースに挑戦した。「付き添ってくれた弟、母に申し訳ない。(亡き)父にいい報告ができなくて残念」。武士のような潔さで頭を下げた。【佐藤隆志】