陸上競技大会「セイコーゴールデングランプリ川崎」が5月6日、川崎市等々力陸上競技場で開催される。ロンドン五輪を3カ月後に控え、女子100メートルと400メートルリレーにアジア最速女王・福島千里(23=北海道ハイテクAC)が登場。昨年の大会では400メートルリレーで日本記録(43秒39)を樹立したが、その再現が期待される。

 福島にとって、勝負を期すシーズンが始まる。世界をにらみ、今季は早々に動いた。3月10日、トルコ・イスタンブールで行われた世界室内選手権に出場。競技人生初の60メートルながら、予選で7秒29の日本記録を樹立。五輪に向け、冬季トレーニングの成果を披露した。その翌日の準決勝はインフルエンザで棄権したが、仕上がりの早さをアピールするには十分だった。

 例年なら4月29日の織田記念がシーズン初戦だが、五輪イヤーとあって高ぶる気持ちは抑えられなかったようだ。中村監督は「60メートルダッシュがやってみたい、ということで参加した。取り組んでいるトレーニングがどこまで通用するのか」と説明した。テーマとするのは、前半の走りだった。もともと鋭く爆発的なスタートが持ち味だが、その勢いのまま60メートルまで持って行くイメージを持つ。「今の状態なら普通に走っても(60メートルは)7秒1台で行ける」(中村監督)。インフルエンザに阻まれたが、順調なステップを踏んだ。

 この冬場のトレーニングでは、今までできなかったことができるようになった。例えば鍛錬機に使う高さ1メートル7センチのハイハードル。これを連続して飛び越えられるようになった。中村監督は「もともと地面反力が強い。彼女の走りは接地時間が短く、その短さに力強さが加われば、より強い(地面への)反発力を生む。それが記録に結びつく」。シーズンインに向けた下地はできた、と言わんばかりの力強い言葉だった。

 今回のゴールデンGP川崎では、昨年樹立した400メートルリレーの日本記録(43秒39)の更新が期待される。1月の北海道恵庭市。ロンドン五輪出場を狙う日本女子短距離の強化選手が集まり、400メートルリレーの練習が繰り返された。昨年の世界選手権は初の決勝進出が期待されたがあえなく予選敗退。その屈辱を晴らすべく、リレーにかける思いは強い。福島は「昨年の収穫は世界でどの位置にいるか分かったこと。1つの目安として、もっといい記録を持ってロンドンに行けたら」と言う。

 失敗も、成功も含め、さまざまな経験を糧に前へと進んできた。その成長の証しとして、川崎・等々力から力強い一歩を踏み出す。