パナソニックが劇的な逆転劇で、7年ぶり7度目の社会人王者に輝いた。連覇を狙った富士通に第4Q9分まで11点リードされたが、エースQB高田鉄男(34)が残り5分余りで2本のTDパスを通し逆転。今季限りの引退を決意している高田は史上3人目の2度目の大会MVPに選ばれた。4度目の日本一を懸け、来年1月3日のライスボウル(東京ドーム)で学生王者の立命大と激突する。

 競技人生の土壇場で、集中力が最大に高まった。「苦しい展開を想定してたんで。最後まであきらめずやろうと、みんなで決めてました」。そう振り返ったのはパナソニックのエースQB高田だ。大黒柱が、劇的なドラマの主役になった。

 残り5分余りになった第4Q。富士通との差は11点。LB松永のインターセプトでつかんだチャンスを逃さない。WR頓花へ42ヤードのTDパスを決めた。2点コンバージョンには失敗したが、まだあきらめない。差は、あと5点。再び攻め込み、敵陣15ヤードからWR小山へTDパスを通した。残り1分11秒での逆転劇。再び2点コンバージョンに挑み、自らエンドゾーンに走り込むと、勝利を確信した高田は両腕を突き上げた。

 高校、大学で頂点に立ち、社会人でもライスボウルを制した「日本のエース」。だが、34歳になる今季は大きな節目を迎えていた。「結構やったし、キリがないから」と、46歳のDL脇坂とともに本年度限りで現役から退く決断をした。負ければ即引退の大一番。だからこそ「楽しめた」と高田。重圧が掛かる状況でも、笑みを浮かべた。そんな姿に、24歳の頓花は「WRみんな(高田)鉄男さんを勝たせたいと思っていた。鉄男さんを男にする、日本一にすると」。エースのもとでチームがまとまり、7年ぶりに強いパナソニックが戻ってきた。

 次の照準は、立命大と対決する来年1月3日のライスボウル。ラストマッチが母校との決戦となる高田は「うれしいのひと言です」とニヤリ。07年度以来8年ぶりの日本一へ。エースを中心に、もう1度力を合わせる。【木村有三】

 ◆高田鉄男(たかた・てつお)1981年(昭56)9月18日、大阪市生まれ。小学校から少年アメフットのチェスナットを始め、大産大付3年時にQBで高校日本一。立命大では3、4年時にミルズ杯(年間最優秀選手)を獲得し、2年連続ライスボウル優勝に貢献。05年松下電工(現パナソニック)に入社し、07年度に日本一に導く。07、11、15年世界選手権日本代表。180センチ、85キロ。

 ◆パナソニック・インパルス 74年に松下電工インパルスとして創部。90年に初の社会人王者となる。94年度にはライスボウルを初制覇し初の日本一に。ライスボウルは04、07年度と3度優勝。08年からパナソニック電工、11年から現名称に変更。グラウンド所在地は大阪・門真市。

 ◆ジャパンXボウル アメリカンフットボールの社会人王者決定戦。87年の第1回大会は横浜スタジアムで開催。翌年からは東京ドームで行われ「東京スーパーボウル」と呼ばれた。03年から現在の呼称となり、04年は初の関西開催。以降東西で隔年開催も、09年から再び東京ドームに。