28日に開幕する卓球の世界選手権団体戦(クアラルンプール)を前に、トップ選手の間で「公然の秘密」となっているラケットのラバーへの不正な加工にメスを入れる動きが出始めた。ドイツ紙フランクフルター・アルゲマイネ(電子版)は17日付で、ドイツのレーゲンスブルク大学の教授が「ブースター」と呼ばれる補助剤を塗ったラケットを検査する方法を開発したと報じた。

 国際卓球連盟(ITTF)は世界選手権期間中の理事会などで議論する見通しで、早ければリオデジャネイロ五輪での導入の可能性もある。

 卓球選手は日常的にラケットのラバーを張り替えてプレーする。その際にオイル系の補助剤を塗ることでラバーの反発力が増し、打球の速度や回転数が上がるという。メーカーが出荷した製品に加工を施すことはルールで禁止されているが、一時問題になった有機溶剤入りの接着剤の使用をチェックする現在の検査には引っかからない。

 ドイツ紙のインタビューで、元世界ランキング1位のティモ・ボル選手(ドイツ)は「(世界の)選手の80パーセントはラケットに不正を施している」と告発した。日本でも水谷隼選手(ビーコン・ラボ)が海外選手の用具違反に抗議して、2012年に国際大会出場を辞退する動きがあった。現状は「(ルールを)守っている選手が損をする状態」(日本の卓球関係者)が続いている。

 一部には中国製のラバーに特に補助剤の効果が大きく、中国選手の圧倒的な強さを支えているとの声もある。問題は国外だけにとどまらない。複数の関係者は「国内でも使用されているといううわさはある」と声を潜めた。

 新たな検査方法はあらかじめ公認ラバーの弾力や粘性などのデータを収集しておき、試合前の計測で異常値を示せば、失格とする仕組み。使用機器は比較的安価で導入に障害は少ないとみられている。