<競泳:日本選手権>◇最終日◇18日◇東京辰巳国際水泳場

 五輪2大会連続2冠の北島康介(27=日本コカ・コーラ)が、復活への手応えをつかんだ。男子100メートル平泳ぎ決勝は59秒91の2位となり、出場した日本選手権では99年以来の無冠に終わった。しかし、08年6月のジャパンオープン決勝で59秒44を出して以来の国内レースで59秒台をマーク。日本代表復帰は確実で、本人も「よくここまで戻れた」と話した。立石諒(20)が59秒84で2連覇し、50、200メートルと合わせて3冠を達成した。

 結果だけを見れば無冠に終わった。しかし、ようやく北島に笑顔が戻った。「勝つとか負けるとかは関係なかった。いかに自分の泳ぎができるかだった。だから負けても満足」と胸を張った。約2年ぶりの国内レース復帰戦で59秒台を出した。優勝した立石とは0秒07というタッチの差。今の北島にとっては優勝との差はなかった。

 13日の50メートル予選で日本新をマークした時のように、ピッチ泳法でリズムを刻んだ。前日の準決勝よりストローク数は、合計で3かき多かった。前半の50メートルを立石に0秒12の差をつけてトップで折り返した。残り10メートルでやや失速。立石に逆転されたが「後半失速するのは分かっていた。でも前半から(飛ばして)行かないと59秒台は出なかった」。計算済みの2位だった。

 50メートル決勝でもタッチの差で立石に敗れた。200メートル決勝では自己ベストから約5秒も遅れて4位。100メートルも予選、準決勝とトップ通過ながら、内容には不満足だった。それだけに「よく59秒台で泳いだよ。ここまでよく立て直したよ。よくここまで戻してこられたと思う」と満足げだった。

 スランプ脱出は無欲が鍵だった。前日、平井伯昌代表ヘッドコーチから「あまり考えすぎるな」と言われた。北京五輪当時の泳ぎを早く取り戻そうと、フォームなどの形にとらわれた。「少し無理やり感があった。アップ(練習)の時に昨日よりいい泳ぎができた。だから何も考えずに(決勝で)泳ごうと思った」。それが好結果につながった。

 2位とはいえ、59秒96の派遣標準記録1を突破した。上野広治水連競泳委員長も「標準を切っているし、(代表は)間違いないでしょう」と、パンパシフィック選手権(8月、米国)での代表復帰に太鼓判。「少しでも多くの国際大会に出て、海外の選手と戦って、今回のドキドキ、ハラハラ感をまた味わってみたい」。北島の12年ロンドン五輪への第1歩が、ようやく始まった。【吉松忠弘】