<競泳:日本選手権>◇5日目◇6日◇東京辰巳国際水泳場

 男子平泳ぎの北島康介(29=日本コカ・コーラ)が、100メートルに続き200メートルでも好記録で五輪出場を勝ち取った。決勝で立石諒(22=NECグリーン)との一騎打ちを制し、2分8秒00で優勝。高速水着が禁止された10年以降の世界最速記録だった。ロンドン五輪で同一種目の3大会連続2冠となれば、1908年、陸上男子のレイ・ユーリー(米国)以来、104年ぶり2人目。生きる伝説が、夢の大記録に向かって突き進む。

 北島らしい大逃げの一手を打った。50メートルを28秒69で突っ込むと、100メートルを1分1秒11、150メートルを1分34秒15で通過。3日の100メートルに続く日本記録(2分7秒51)の更新が期待された。だが残り15メートルから伸びず、0秒49届かない。それでも2分8秒00。高速水着が禁止された10年以降では世界最速記録。ゴール直後のインタビューでは息をはずませ「何も言えねーっ!」。会場がドッと沸いた。

 北島

 必死でしたよ。ああいうレースが自分の持ち味だし、スタイル。まだできることを見せられた。去年の世界選手権(200メートル銀メダル)とは違った、成長した姿を見せられた。

 20代半ばまではガンガン泳いだ。だが9月で30歳。故障につながる過度な練習はもうしない。1月に2週間、3月に1週間と2度、国立スポーツ科学センターの小泉トレーナーをロスまで呼び寄せ、ハンマー投げの室伏が取り入れるような体幹トレーニングに励んだ。腰、肋骨(ろっこつ)回りの大きな筋肉に頼るのではなく、おなか回りの細かな筋肉まで使えるように意識し、効率よく力を発揮できるようになった。

 加えて今回、南カリフォルニア大のサロ・コーチが緊急来日し、直接指導に当たる。愛弟子の力強いレースに同コーチは「彼は英語が向上した。昨年までは私の言うことを理解できなかったが、今年は分かる」。盤石の環境が整い、心身ともに充実の時を迎える。

 4回目の五輪は大きな記録がかかる。同一種目の3大会連続2冠となれば、104年ぶり2人目の偉業だ。世界選手権を制した100メートルのダーレオーエン、200メートルのジュルタが壁になるが、日本代表・平井ヘッドコーチは「初日から始まる100での金がカギ。デーブ(サロ・コーチ)のところで100に勝つトレーニングをしている。自信持って臨めば達成できる」。

 北島は「(2冠は)決して簡単なことじゃないけど、取りたいという気持ちは強くなった。まだ記録は伸びているので進化した姿を夏に見せたい」と宣言。最高の結果で選考会を終えた。さぁ次は夢のロンドンが待っている。【佐藤隆志】

 ◆北島康介(きたじま・こうすけ)1982年(昭57)9月22日、東京都生まれ。本郷高-日体大-日本コカ・コーラ。177センチ、72キロ。

 ◆五輪3大会連続2冠

 同一種目の3大会連続金メダルは過去に24人いるが、3大会連続2冠は100年以上前に米国陸上男子のレイ・ユーリーが記録したのが唯一。ユーリーは1900年パリ大会で立ち幅跳びと立ち高跳びに優勝。04年セントルイス大会を経て、08年ロンドン大会で3大会連続「立ち跳躍2冠」を達成。ちなみに立ち跳躍種目は1912年を最後に、現在は行われていない。競泳では00年シドニー大会でアレクサンドル・ポポフ(ロシア)が3大会連続2冠に挑戦。50メートル自由形は6位、100メートル自由形は2位に終わった。