<男子テニス:国別対抗戦デ杯・世界グループ入れ替え戦>◇第1日◇13日◇東京・有明コロシアム

 世界の「エア・ケイ」が完全復活だ。世界12位の錦織圭(23=日清食品)が、同92位のアレハンドロ・ファジャ(29)に6-3、6-4、6-4の1時間50分で快勝。よもやの8月の全米オープン初戦敗退から立ち直り、日本に幸先の良い1勝をもたらした。続く添田豪(29)が敗れ、第1日は1勝1敗となった。

 コート上での両手のガッツポーズが、復活の証しだった。錦織は、自らの不調を振り払うかのように、勝利の瞬間、雄たけびを上げた。「自分をどこまで出せるか。素直にいいプレーができてうれしい」。最後は、好調のサーブが、相手のリターンを吹き飛ばした。

 第1セットの滑り出しから、ギア全開で勝負した。自分のサービスゲームで11ポイントを連取。「サーブが良かったので、ストロークも振り抜けるようになった」。プレーのリズムが生まれ、早めの展開でファジャを圧倒した。1時間50分の見事な復活劇だ。

 8月の全米オープン初戦で、予選上がりの選手に敗れた。8月の米国のハードコートは得意なはずが、終わってみれば3勝4敗と負け越し。「どうしても気持ちが盛り上がらなかった」。自分に期待した分、ショックは大きく、全米で敗れた日は部屋に閉じこもった。

 今大会に復活の期待を込めた。団体戦は個人戦と違い、日の丸を背負う重圧もあるが、仲間や声援から通常以上のパワーも得られる。「1人1人の勝利がチームに響く。絶対、勝つと自分に言い聞かせることができた」。失っていた自信を奮い立たせることに成功した。

 全米後は日本に帰国。2週間ほど、ナショナルトレセンでみっちりと練習を積んだ。準備万端で臨んだ今大会で「デ杯のおかげで精神的にも強くなれる」。日本が世界に誇るエースが、完全な復活で日本に1勝をもたらした。【吉松忠弘】