<大相撲名古屋場所>◇5日目◇11日◇愛知県体育館

 今場所の綱とりは絶望となった。大関稀勢の里(27=鳴戸)は東前頭3枚目の千代大龍(24)に送り出されて、序盤で2敗目を喫した。平幕相手の2つの黒星に印象は悪く、北の湖理事長(元横綱)は今場所後の横綱昇進の可能性について、絶望を示唆した。

 深く、長いため息だった。それは何度も出てきた。右手で頭を抱えて首を振った。左手で太ももをたたき「あぁ~!」という後悔の声も響いた。支度部屋。稀勢の里は囲み取材を早々に打ち切ると、腕組みをして1人、思案した。右手で前まわしを取るしぐさを幾度となく繰り返した。目をつぶっても覆らない事実。受け入れがたい黒星を、ずっと悔やんでいた。序盤で2敗。今場所の綱とりが終わりを告げた。それは、自身が一番分かっていた。

 千代大龍に、立ち合いで負けた。先月29日に出稽古先で胸を合わせた際、まわしを取れないと土俵外に押しやられていた。その反省を持って狙った右前まわしだが、取れずにかち上げられた。突き押しは残したが、相手のはたきにつんのめった。そのまま送り出し。平幕相手に完敗だった。

 「13勝以上の優勝」を条件に掲げていた北の湖理事長の言葉は厳しかった。「自分の相撲を取りきれない。印象は良くない。(首位と)2差は厳しい。それも平幕だし、これから上位だから。(来場所以降の)次につなげる相撲を取っていかないと」。事実上の“終戦”宣言だった。

 不運はあった。場所中は高田川部屋からも付け人がつき、幕下安芸乃山が取組前の稽古相手を務めていた。だが、3日目に虫垂炎を発症して離脱。急きょ代わった三段目の竜電もこの日、取組で負傷して離れた。2度の黒星は、いずれも代わった日。リズムの変化を、取り戻す力がなかった。

 「まだ終わってないですから」「切り替えていくだけです」「1日1日ですから。また明日からです」。並べた言葉は、自分に言い聞かせているようだった。ただ、言葉通り、ここから勝たねば、綱とりを持ち越すことすらできない。大関の役目を、果たさなければいけない。【今村健人】