阪神は6回までは最高のゲームだった。北條の悪送球が出るまでは。逆転でのCS進出を争う上で、あのワンプレーに心配の種が凝縮されている。

打てない打線がこの日はつながった。しかも2死から。4回は好機で高山が凡飛に倒れ、チャンスがついえたかに思えたところで、7番北條が2点タイムリー。9番投手の秋山にまでタイムリーが出た。下位でビッグイニングなんて最高じゃない。ロペスとソトに打たれた本塁打は、相手の力が上だから仕方ない。ある意味想定内の2発で、理想的なゲーム運びだった。

ところがだ。秋山は前の打席で本塁打を浴びたロペスを苦心して三ゴロに打ち取った。北條も捕ったまではよかったが、大きく一塁送球をそらせた。平凡なゴロで足の速い走者でもないのに、なぜ慌てる必要があるのか。1死走者なしになるところが秋山は降板を命じられてピンチが広がり、さらに1点を失った。

投手はたまらんですよ。野手が守ってくれることが大前提で、初めて打たせて取る投球ができる。打たせて安心できるのと、打たせたら何かするんじゃないかでは、180度違う。これではこの先、CSを争う上で接戦を勝ち切れない。投手陣の気持ちも持たない。

私はキャンプから、阪神は守りをしっかりしないと優勝争いはないと言い続けてきた。それが逆転でCSを争おうとしている今も、練習から緊張感、危機感がない。今日の試合前練習も見たが笑い声しか聞こえてこない。他チームの守備練習を見ると、実戦も想定しながらやっているところが多い。ショートバウンドを捕る練習や、短いスローイング、バックホームの練習をしているところもある。

阪神も練習してないとは言ってない。同じやるにしても、高い意識と緊張感を持って実戦を想定した練習をしないといけないということだ。これは今年に限ったことではない。この状態、このレベルの守備では来年も優勝争いは難しい。サヨナラ負けに、敗戦につながった1つのエラーを、しっかり肝に銘じてほしい。

DeNA対阪神 6回裏DeNA無死、マルテは北條からの送球をベースの横で捕球する、右は打者ロペス(撮影・加藤哉)
DeNA対阪神 6回裏DeNA無死、マルテは北條からの送球をベースの横で捕球する、右は打者ロペス(撮影・加藤哉)