最速163キロを誇るロッテのドラフト1位・佐々木朗希投手(18)が24日、プロ入り後初めて打者と対戦した。本拠地ZOZOマリンで、ドラフト5位福田光輝内野手(22)と茶谷健太内野手(22)の左右2打者とフリー打撃で対戦。約6分間、投じた25球は全て直球。うち13球が150キロオーバーだった(未計測も4球)。最速は157キロで3度マーク。直前の投球練習では158キロを2度計測した。ヒット性の打球は4、5本に抑えた。

    ◇    ◇

打撃ケージの真後ろで見て、まず、なによりも速さを感じた。今日のボールは、私が見る限りでは全力に近い。2月のキャンプでは恩納村でのブルペンの立ち投げを取材したが、その時は8割の力と本人が言っていた。もしも、今日のボールも8割だとしたら、全力ならどうなってしまうのか、私には想像もつかない。

マウンドの佐々木は近くに感じた。体も大きく、リーチも長い。打者からすれば、投げたボールは自分に向かってくるように感じたと思う。佐々木は左肩が開かない。しっかりバッターに向いている。そのため、リリースポイントが見えづらい。

そうしたことも総合的に含めると、終速が落ちないイメージを受ける。同じ155キロ以上投げる投手と比較しても、佐々木のボールはホームベース付近でもスピードが落ちない印象だ。普通はホームベース付近から速度が落ちる傾向があるが、そう感じないのは、サイズやリーチや打者から手元が見えづらいことなどが関係しているからではないか。ボールのキレ、スピード、軌道、どれを取っても高いレベルと言える。

この日のピッチングは抑えてやろうというピッチャーの本能が出ていた。本来、打撃投手は打者に打たせるように投げるものだが、そもそも投手は打たれたくない習性がある。初の打撃投手ということもあったとは思うが、佐々木には打たれたくないという意識があったように感じた。

強いて言えば、気になったのは必要以上に力みが感じられたことだ。体全体から力みが見られた。2球目に高めに大きく外れたボールがあったが、ブルペンではない場面だった。力み過ぎからくるコントロールミスで、プロとしてはじめて打者に投げるからこその緊張感が影響しているのだろう。ただ、試合ではこうした力み過ぎがあっては制球に影響が出る。力むこと自体は悪くないが、力み過ぎないようにすることも、これから大事なポイントになる。

佐々木のストレートを見て、改めて思うのはこのストレートなら、変化球はスライダーとフォークの2種類で十分ということだ。この素晴らしいストレートにさらに力強さを加えていくためにも、なるべく少ない球種でどんどんストレートを磨いてもらいたい。それだけのストレートであると、自信をもってこれからの練習に取り組んでほしい。

最後に、今年は大変なシーズンになってしまっている。多くのプロ野球ファンが不安を抱え、各球団、NPBも前例のない困難に向き合う日々だ。それはロッテも同じことだが、ひとつだけ言えるのは、佐々木は結果として1軍首脳陣の手元をほぼ離れることなくここまで調整が進んできた。今後も1軍で練習を続ける可能性はある。井口監督、吉井投手コーチが自分の目でその力を確認できたことは、佐々木にとっては非常に良かったと感じる。これから段階を踏み、試合形式で投げる佐々木が楽しみだ。(日刊スポーツ評論家)

打撃投手で福田光を打席に投球するロッテ佐々木朗(撮影・河田真司)
打撃投手で福田光を打席に投球するロッテ佐々木朗(撮影・河田真司)