巨人のキャンプ視察で1番楽しみにしていたのが、秋広のバッティングだった。高卒ルーキーでありながら、紅白戦で7打数5安打。結果を出し、1軍キャンプに合流した。身長2メートルでいったいどんなバッターなのか興味津々だった。

練習試合前のフリー打撃は室内練習場だったが、原監督の好意で打撃ケージの後ろで見させてもらった。第一印象としての感想は「スイングの柔らかさ」だった。右投げ左打ちの打者は体の左サイドが器用に使えず、利き手でもある右腕を伸ばして使うため、スイングの際にグリップが体から離れていくタイプが多い。しかし秋広は右腕を曲げて使えるから球を強くたたけるし、懐も深い。

広島との練習試合は3打数無安打。結果は出なかったが、首をひねるような内容がなかった。第1、第2打席が変化球を打って投ゴロだが、打ちにいくべき球を積極的に振っていた。第3打席は見逃し三振だが、カウント1-1から低め変化球に空振りし、追い込まれてからは同じ球を見極めていた。対応力もある。最後の見逃しも、低いと思ったのだろう。追い込まれているだけにバットを振って良かったが、どの打席を見ても、本人が意図する中身が伝わってきた。

何げなく見ていると分からないが、大きく成長する打者は1球1球に「なんで○○したんだ?」や「なんで○○しなかったんだ?」という疑問が浮かばないもの。この手のタイプはしっかりと考えてプレーしていて、経験を積めばどんどんよくなる。スイングの「柔らかさ」というのはなかなか身に付かないが、力強さは努力の方向性を間違わなければ必ず成長する。まだまだ非力さは残るが、自分に足りないものも理解しているだろう。スイングに変な“癖”もなく、今後、体幹が強くなれば「とてつもない打者」に成長できるスケールを感じさせた。(日刊スポーツ評論家)

巨人対広島 8回裏巨人2死三塁、見逃しの三振に倒れる秋広。投手大道(撮影・江口和貴)
巨人対広島 8回裏巨人2死三塁、見逃しの三振に倒れる秋広。投手大道(撮影・江口和貴)