プロ入り3年目を迎える中日の根尾は、今キャンプからショートの守備に専念して練習していると聞いた。人それぞれに考え方の違いがあるし、チーム事情によっても違いはあるだろうが、個人的に根尾がショートに専念するのは大賛成だった。まずは1つのポジションを徹底的に守れるように集中すれば、余計なことを考えずにやれる。特に完璧を求めるような生真面目なタイプの選手は、その方が上達も早いと思っている。どのぐらい成長しているのか、注目して巨人との練習試合を視察した。

腰を下ろし、グラブを地面に付けて低く構える根尾の姿に違和感を感じた。これが速い打球に差し込まれないようにするサードやファーストならいいが、二遊間を守る選手の構えではない。二遊間を守る選手は360度、どこへでも動けるような“備え”が重要。これだけ低く構えると、横や後方に飛んだ打球への反応が遅れてしまう。実際、試合での根尾の打球への反応は、二遊間を守る選手の動きより、遅れていた。

努力の方向性を間違ってはいけない。内野守備コーチが指示しているのか、自分で動きやすいと考えて実践しているのかは分からない。しかし、二遊間を守る守備のうまい選手で、これほど低く構える選手はいないだろう。自分自身で考えてやるにせよ、まずは守備の上手な選手を見てまねをするなり、分からないことがあればコーチや目標にする選手に質問してもいい。私もショートからサードに転向したときは、いろいろな選手の話を聞いて参考にさせてもらった。

成長する選手は「素直さ」と「謙虚さ」を持っている。アドバイスする側の立場から言えば「もっとこうすれば良くなる」と思うから言うのであって「メチャクチャにしてやろう」と考えて言う人はほとんどいないだろう。もちろん、あれこれと人の話を聞き過ぎてグチャグチャになる選手もいるが、そういった意見を自分なりに整理し、アレンジして理解することが大事。人の意見をかみ砕いて自分のレベルを上げるのも、その人の素質の一部だと思っている。

常識にとらわれずにチャレンジする「勇気」も必要だが、まずは「謙虚な気持ち」を持って「素直」に人の意見に耳を傾ける。ブレずに努力を続ける「芯の強さ」と、人の話を聞かない「頑固さ」を履き違えてはいけない。個人的にはプロ入り前から根尾の素質を高く買っていた1人だと自負している。1軍で活躍する姿を期待している。(日刊スポーツ評論家)

巨人対中日練習試合 4回裏巨人2死、岡本和真の打球をグラブではじくも遊ゴロに仕留める根尾昂(撮影・上田博志)
巨人対中日練習試合 4回裏巨人2死、岡本和真の打球をグラブではじくも遊ゴロに仕留める根尾昂(撮影・上田博志)
巨人対中日練習試合 4回裏巨人2死、岡本和真の打球をグラブではじくも遊ゴロに仕留める根尾昂(撮影・上田博志)
巨人対中日練習試合 4回裏巨人2死、岡本和真の打球をグラブではじくも遊ゴロに仕留める根尾昂(撮影・上田博志)