これぞ4番という巨人岡本和の仕事だった。1点ビハインドの9回1死一、二塁から逆転サヨナラ本塁打。今季はここまで、打率も得点圏打率も2割5分以下。ホームランこそなんとか5本塁打していたが、勝負弱さが目についていた。そんな中で、2打席連続アーチで意地を見せた。

今季の岡本和は、復調しそうでしないもどかしい打席が続いていた。しかし、打ちそうな“予感”は、漂っていた。8回、先頭打者で迎えた第4打席だった。カウント1-1から、ヤクルトのマクガフの内角151キロの真っすぐをレフトスタンドへ6号ソロ。今季は内角の速球系の球にことごとく詰まっていたが、体にバットが巻きつくようなスイングで難しい内角球を仕留めていた。

9回の第5打席は、逆方向への1発だった。初球は内角の真っすぐを見逃してボール。この見逃し方に余裕を感じた。前の打席で内角球を仕留めており、内角への真っすぐは「見せ球」でしか使えないという予測があったのだろう。2球目は外角へのスライダーがやや高めにきたが、コースはギリギリで、見逃しストライク。少しだけピクついたように、外角球を狙っている気配はあった。3球目は高さもコースも似たようなスライダーで、今度は逆方向に狙い打ちして本塁打にした。

打者は投手の投げる球を打つため、どうしても「受け身」になりやすい。不振になると、どうしても後手後手に回ってしまうが、苦しんでいた内角球を仕留めたことで優位な立場で打席を迎えられた。「内角球は見せ球でしか使えないだろう」という予測が成り立っていた打席だった。

それでも外角のスライダーに対し、見事な流し打ち。外角に狙い球を絞れる状況とはいえ、強引に引っ張りにいっていたら本塁打にするのは難しかっただろう。逆方向でありながら、スタンド中段まで飛ばしたパワーは、4番打者の力を証明する1発だった。(日刊スポーツ評論家)

巨人対ヤクルト 9回裏巨人1死一、二塁、サヨナラとなる右越え3点本塁打を放った岡本和(左)を祝福する原監督(撮影・横山健太)
巨人対ヤクルト 9回裏巨人1死一、二塁、サヨナラとなる右越え3点本塁打を放った岡本和(左)を祝福する原監督(撮影・横山健太)