阪神に2試合連続逆転負けしていた巨人は、この試合でも6点リードを終盤に追いつかれ、手痛い引き分けに終わった。巨人にとっては、絶対に落としたくない試合だったが、今試合に限っては「絶対に勝つ」という試合運びをしていなかった。逆に言えば、阪神の「なめるなよ」という執念が実った引き分けだった。

わずかな“隙”になった。6回表の攻撃が終わると、坂本の打順に投手の鍵谷を入れた。この回、先発のメルセデスには代打若林を送っており、そのままショートのポジションへ。坂本の疲労を考慮しての変更か、体調不良があったのかもしれない。しかし、6点差とはいえ、坂本は攻守の要であり、相手は首位争いをしている阪神。しかもチームは2連敗中で、いずれも試合終盤での逆転負け。絶対に勝たないといけない試合だとすれば、少し早い交代だと思っていた。

6回裏、先頭中野の当たりはセンター右へのフライだった。イージーフライではなかったが、丸がグラブの土手に当てて記録は三塁打。その直後、サンズのショートゴロを若林がジャッグル。この時点で内野は定位置に守っており、1失点はそれほど気にする必要はないのだが、必要以上に嫌な雰囲気を感じたのは私だけだろうか。7回にも無死一塁からのショートゴロを若林に代わっていた広岡がエラー。これをきっかけに2点を失い、同点に追い付かれた。

勝負事の怖さだろう。阪神からしてみれば、6回での坂本の交代は「なめられた」と感じたのではないか。巨人にしてみれば、厄介な闘争心に火をつけた。そして坂本に代わってショートに入った若林と広岡がそろってエラー。慣れない土のグラウンドでもあり、普段は守らないショートだということも負担になったのだろう。巨人は中継ぎ陣に不安がある。これが優勝争いをしていないチームであったならいいが、ペナントの流れ、試合の流れ、相手、そして翌日に試合がないことを考慮すれば、早すぎるポジション変更だった。

個人的には混戦が続きそうだと思っているが、打線の状態を見る限り、巨人がやや有利だと思っていた。しかし、3連勝できた展開で2敗1分け。これで優勝の行方はまったく分からなくなった。(日刊スポーツ評論家)