ヤクルト対阪神 6回裏ヤクルト無死一塁、犠打を決める代打嶋(撮影・鈴木みどり)
ヤクルト対阪神 6回裏ヤクルト無死一塁、犠打を決める代打嶋(撮影・鈴木みどり)

まるで日本シリーズのように、9回のゲームセットまで緊迫感のある試合でした。両投手とも1球1打の重みが分かっているから慎重になり、ベンチも総力戦だから試合時間が長くなる。でも阪神が唯一、エアポケットに入ったようになったのが、4-4から勝ち越しを許した6回裏でした。

この回から登板したアルカンタラが先頭の元山にヒットを許して無死一塁の場面。嶋は100%バントの代打でしたが、初球で簡単に送らせてしまった。嶋ほどのベテランでもかなり重圧がかかる場面でしたが、「優しい真っすぐを投げてくれて、ありがとうございます」だったと思います。

続く塩見にも、初球の甘い球で簡単に中越えの勝ち越し打を浴びましたが、初球から積極的に振ってくるデータは出ています。気負ったアルカンタラが勝負を急ごうとしていたのなら、経験豊富な梅野が注意深く導いてほしかった。梅野も嶋と塩見への初球に悔いが残って、眠れないんじゃないかと思います。4回の好機でガンケルに代打を送ったり、早め早めの継投でベストは尽くした戦いだっただけに残念な場面でした。

残り11試合で3ゲーム差。ヤクルトが9個引き分けが多い関係で、実質的には4・5か5ゲーム差でしょう。しかもマジックが1桁に減ると、相手は一気に優勝モードになる。でも阪神も可能性のある限り全力を尽くすのは当然で、希望はヤクルト戦があと2試合あることです。そこまでの巨人、広島との5試合を全勝して、19日、20日の甲子園での直接対決を迎えたい。

13ゲーム差をひっくり返された08年の終盤も、「また巨人が勝った」とすごいプレッシャーを受け続けました。ヤクルトにも「阪神も負けへんな」と思わせる5戦全勝で、少しでも焦らせたい。苦い1敗だけど、前を向いて戦ってほしい。(日刊スポーツ評論家)

ヤクルト対阪神 6回裏ヤクルト1死二塁、中適時二塁打を放つ塩見(撮影・鈴木みどり)
ヤクルト対阪神 6回裏ヤクルト1死二塁、中適時二塁打を放つ塩見(撮影・鈴木みどり)