新人の桐敷は面白い。身長は178センチとそう高くなく、真っすぐも140キロ台。でも上からしっかりたたけて、ギリギリでボールを離すポイントが独特。ビクッとなっていた打者の反応を見ると、特に変化球は一瞬、消えるように見えたんじゃないですか。上から落ちてくる感じで。だから高めの変化球で空振りが取れていたし、5安打されたけど泳いだりタイミングを外された当たりが多かった。

もちろん真っすぐも生きるし140キロ台でも速く見える。甘く入った球でも打球が押されていたでしょ。コントロールも良く、対角線に広くストライクゾーンも使えているから的を絞りづらい。昨秋大学で完全試合をしたようだけど、何か特長がないとそんな快挙はできるものじゃない。150キロ台を連発しても打たれる投手は打たれますから。今の時期の実戦はどの球が通用するかしないかを試す期間なので、その収穫も多かったんじゃないですか。

課題を挙げるなら、慎重になり過ぎないこと。この日も2ナッシングから、低めに連続でワンバウンドを投げたり、もったいない明らかなボール球があった。捕手は追い込むと低めに来いとジェスチャーするけど、投げる方は少しゾーンを上げての3球勝負でいい。特に桐敷のように攻めの投球をするタイプは、厳しいコースを狙い過ぎて、球数がかさむともったいない。むしろ高めで空振りが取れていたということは、打者的には低めの方が見極めやすいタイプかもしれない。

プロでの最長がこの日の2イニングなので、スタミナ面も含めて先発の合否はこれからでしょう。ローテは昨年最多勝の青柳と10勝の秋山と伊藤将、9勝のガンケルは外せない。残る2枠候補も西勇や藤浪、及川らがいる。ただこの日投げた西勇、秋山、青柳は、ややおとなしめの投球が気になった。桐敷と同じく、慎重になり過ぎてカウントを悪くする場面も目についたのでね。中日投手陣が見せたように、もっと攻撃的な投球をしなきゃ怖くないし、球数が多くなる。打者に考える時間を与えないぐらいの3球勝負でいいんです。(日刊スポーツ評論家)