日本ハム打線がファーストストライクを打っていることが、特徴的だった。初回、郡は巨人先発今村の真ん中低めストレートを左中間へ二塁打。続く万波も初球変化球が甘めに入ったところを三塁線を破るタイムリー。2球で1点。これは、新庄監督がメディアを通じて発信してきた「ファーストストライクから打っていこう」のチーム方針が浸透してきたと捉えることができる。

1回裏日本ハム無死二塁、左翼線に適時二塁打を放つ万波(撮影・黒川智章)
1回裏日本ハム無死二塁、左翼線に適時二塁打を放つ万波(撮影・黒川智章)

「ファースト-」は、プロ野球の世界ではよく耳にするフレーズだが、言うほど簡単ではない。実際にトライしても、凡打に終わると首脳陣から苦言を呈される。打てとは言ったが、何でも手を出すな、もしくは、状況を頭に入れて打席に入れ、などの追加指示を出されることが往々にしてある。

そうなると、失敗を恐れる選手は打てなくなり、当初の「ファースト-」は机上の空論で終わる。それが、新庄監督は凡打となっても構わないと、そこまで踏み込んでおり、選手としてはやりやすい。ここが肝心だが、選手の気持ちにたった踏み込んだ指示により、両者の間に信頼感ができつつあると感じる。

5回裏日本ハム無死、今川は左越え本塁打を放つ(撮影・佐藤翔太)
5回裏日本ハム無死、今川は左越え本塁打を放つ(撮影・佐藤翔太)

郡も万波も、凡打を恐れるようなスイングには見えなかった。また、今川はカウント2-0から、万波は初球と、いずれもファーストストライクをホームランしている。どのケースでも、迷わず行こうという思い切りの良さを感じる。打率はファーストストライクが高く、1ストライク、2ストライクと追い込まれるにつれ低くなっていく。確率の高い状況で力を発揮させる新庄監督の思惑は、この日は結果に結び付いた。

これが公式戦で実行できるか。そのためには、ミスショットせず仕留める確率を上げなければならない。この試合では31打者のうち、22人がファーストストライクを振り、9人が見送った。この日は積極性という表現で収穫が多かったが、結果がでなければ見方は変わる。淡泊な攻撃と映り、回を追うにつれプレッシャーが増す。

「ファーストストライクから打っていく選手を使う」。新庄監督が公言してきたチーム改革へのひとつのステップだ。積極性が浸透し、ミスショットが減り、結果につながるか。今度は、新庄監督の手の内を知った相手とのせめぎ合いが楽しみになってきた。(日刊スポーツ評論家)

5回裏日本ハム無死、ソロ本塁打を放った今川(手前)を迎える新庄監督(撮影・たえ見朱実)
5回裏日本ハム無死、ソロ本塁打を放った今川(手前)を迎える新庄監督(撮影・たえ見朱実)