阪神にとって先発した小川の好投は収穫だった。この日は坂本が女房役だったが、得点力の高いヤクルトに対し、高低だけでなく、ホームベースの幅を駆使した投球が効果的だった。

ただ勝敗の分岐点になった「6回」はもったいなかった。ピッチャーの高橋に遊安を許し、1死一塁から青木には当たりは良くなかったが、一、二塁間を破られてピンチを招く。

青木は小川の外角球をあえて手首を返して広くなったヒットゾーンに転がすのだから、さすがと言わざるを得なかった。山田を打ち取ったが、村上にはボールが先行、捕逸も重なった末の四球になった。

すでにこの時点で球数は100球を超えていた。球威が落ちてきていたし、制球もばらつき始めた。この間、福原投手コーチがマウンドに向かったが、ベンチもそれを感じていたことだろう。

この時点で小川の“限界”を察し、交代機を探っていたのだろう。6回2死満塁。5番サンタナに2ボールからのカットボールをまんまと中前に運ばれて2点リードを許し、左の渡辺にスイッチを決断する。

その渡辺が左打者の長岡、助っ人オスナの連打で突き放された。この場面、実績のあるリリーフをつぎ込むならともかく、力投していた小川をそのまま投げさせる手もありだった。

主戦の西勇、青柳らが投げていれば、サンタナに適時打の2点ビハインドだけでの交代はなかっただろう。投球は及第点の小川だが、これからベンチの信頼を積み重ねていく必要があるということだ。(日刊スポーツ評論家)