ファンの思いを胸に、ガムシャラに戦え! 日刊スポーツ評論家の桧山進次郎氏(52)が浮上の兆しが見えない阪神に5箇条の緊急提言だ。打ち損じの多さを指摘し、ワンプレーの怖さを知るべきと訴えた。虎の暗黒時代を知る同氏がふがいない戦いを続けるチームに辛口エールを送った。

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6連勝して勢いづいたかにみえたが、その後の3カード連続負け越しはつらいです。アルカンタラ、湯浅、岩崎の後ろ3枚が固まってきたので、戦術的には1点でもリードしながら試合を運びたい。

<1>先行逃げ切り 問題の打線は現状ビハインドをひっくり返す打力がありません。11試合の逆転負けはリーグ最多。先取点をとったゲームはセ・リーグ唯一の負け越しではありますが、6勝8敗。反発力に乏しく、今は先手を打って、勝ちパターンにつなぐ展開に持ち込みたい。

<2>打ち損じ厳禁 ファウルが多すぎる。特に大山、佐藤輝らの主軸に感じますね。広島の17本塁打がリーグ最少で、最多167得点は確実性が伴っているからで、そんなに振り回さなくてもボールは飛んでいくのにと思ってしまいます。大山も最初から振りにいくのはいい。でももうちょっと工夫が必要でしょと言ってあげたい。佐藤輝のインハイ攻めはどこまでも続き、どこまでも同じ対応をしているふうにしか見えません。打席での立ち方、狙い球への目付け…、もうちょっと深く考えてほしいです。

<3>プレーの怖さ 負けが込んでるからかもしれませんが、各選手が淡々とやってるように見えます。もっとワンプレーの怖さを知ってほしい。それを知らないから、今は阪神野球が軽く見えるのかもしれません。それどころか周囲から試合に敗れても笑ってる選手がいるなんてことを聞くとガッカリです。

<4>打順、守備の固定 野手から言わせてもらうと、「打順」「守備位置」はコロコロ変わるとリズムがつかみづらい。できれば毎日同じリズムでプレーしたい。内野はもちろん、外野だってレフト、センター、ライトでは飛んでくる打球の質は異なるから難しい。個人的に佐藤輝はシーズンを通してライトに固定すべき。将来的には三塁かもしれない。でも大山が一塁に就いたとしても、今年の佐藤輝はライトに固定する。攻守に集中させれば、インハイ攻めに空振り、小フライも少なくなって好結果を生むのではないでしょうか。

<5>ファンのありがたみ これだけ負け続けてもファンは甲子園に足を運んでくださっています。選手はこの現象を常識だと思ってませんか? ぼくは“暗黒時代”にプレーしていますが、5回を過ぎたらスタンドは閑古鳥でした。ファンは我慢しながら応援してくれてます。もっと見られていることを自覚したら悔しさをプレーにぶつけることができるはずです。ずいぶんと差はつきましたが先は長い。1戦1戦ガムシャラに戦ってほしいです。【取材・構成=寺尾博和編集委員】


▽阪神の暗黒時代

阪神には85年日本一の2年後である87年から01年まで15年に及ぶ長い低迷期があった。Bクラスが14度、最下位10度はまさに暗黒時代でさまざまな珍事が引き起こされた。

87年の勝率3割3分1厘は球団最低で、ファンからは「夢の100敗」という自虐的な冗談も。世はバブル経済真っ盛りで、有力企業への球団身売りまでささやかれた。

95年オフには、新庄剛志が「僕にはセンスがない」と突然の引退表明。後に撤回するというドタバタ劇だった。同年途中から指揮した藤田平監督は、翌年96年限りで解任を告げられたが、納得せず。球団側と異例の9時間16分ロングラン会談の末、退団が決まった。

外国人にも泣かされた。メジャーの強打者グリーンウェルが97年に加わったが、自打球を足に当て骨折。「神のお告げ」と言い放ち、引退してしまった。99年には左腕のメイが、野村克也監督を批判するビラをまくという前代未聞の暴挙に出た。

3年連続最下位に沈んだ野村克也監督は、01年に沙知代夫人の脱税問題で辞任。それでも低迷脱出への基盤をつくり、後を受けた星野仙一監督が03年にリーグ制覇を成し遂げた。