矢野監督の采配がさえた1勝だった。なかなか1-0で勝ち抜くのは難しいし、ベンチとしてもためらうものだが、まるで昨シーズンの「9回打ち切り制」のような、早め、早めの選手起用が功を奏した。

6回裏に大山の適時打で1点を先制。7回表の守備から、右翼を守った6番糸井をベンチに下げて、代わって島田を起用。この後も糸井に打順が回ってくる可能性は十分に考えられたが思い切った。

わずか1点リードだから矢野監督も迷ったことだろう。だが7回表2死二、三塁で、右方向に飛んだ浅村の飛球を、右翼の守備に入ったばかりの島田が好捕したのだから采配が的中したといえる。

またこの回は、先頭の炭谷が中前打、代打山崎の投前バントで二封を狙った西勇が悪送球で無死一、二塁(記録は失策)。監督の立場でいうと、同点までは我慢という心理が働いてもおかしくないが、西勇のスイッチを決断した。

代わった左の渡辺が西川犠打で、1死二、三塁のピンチに2番小深田を3球三振。さらにアルカンタラが浅村を右飛に仕留め、島田が好守をみせたのだから相手に流れを渡さなかった。

「点を奪うより、点を与えない」ベンチワーク。大山の適時打は、楽天田中将の失投。阪神は内容では負けていたが、試合で勝った。少し不安なのは岩崎の投球内容だ。パ・リーグは「DH」が入ると強いから、その意味でも本拠地で幸先のいい勝ちを収めることができた。(日刊スポーツ評論家)

阪神対楽天 楽天に勝利しガッツポーズを見せる矢野監督(撮影・加藤哉)
阪神対楽天 楽天に勝利しガッツポーズを見せる矢野監督(撮影・加藤哉)