監督が代わった最初のキャンプで、はっきり分かることがある。多くの監督は「横一線」という言葉でチーム内競争を促すが、本当に広くチャンスを与える新監督は、私が見てきた中では少ないように思う。
ロッテ吉井監督は平等にチャンスを与えるぞ、という方針を打ち出している。14日中日戦、この日のヤクルト戦で、その姿勢が確認できた。まず目を引くのは昨年はわずか2試合出場の捕手田村だ。中日戦で先発マスクをかぶり、ヒットも放った。この日も5回に指名打者で打席を与えられ、中前打で結果を出した。
昨年までの流れから2年目松川、4年目佐藤都の序列が予想されるが、そこに田村が割って入ろうとしている。吉井監督の「あとはお前次第」とのメッセージが現時点では届いている。
同じように、投手では左腕坂本が2番手として1回を抑えた。ストレート、変化球ともにキレがあり、コースにきっちり制球されていた。昨季は途中でヤクルトから移籍し、リーグも変わりペースをつかむのに必死だったはず。ロッテでは貴重な中継ぎ左腕として、おもしろい存在になりそうだ。
ショートは茶谷が1歩リードしているが友杉、小川にも出番を与えている。茶谷はファースト、サードも守り、内野はどのポジションもいけるぞという意欲を前面に出す。1安打しており、その他の打席も内容は良かった。
ソフトバンクで自由契約を味わい、ロッテでは育成から支配下にはい上がってきた。「チャンスがあれば、どこのポジションでも」の強い意思表示は、それだけで内野に緊張感を生む。
2打席連発した山口にも、ロッテでは落合さん以来となるホームラン王への期待を感じる。山口には継続して振り切れる強みがあり、そこにロッテとしては出色の長距離打者としての可能性が見える。
ここから1軍、2軍への振り分けが始まる。吉井監督の「チャンスは与える」という方針により、チームは新陳代謝という競争のさなかにある。
先発佐々木朗希のピッチングは何も言うことはない。この時期、投手の仕上がりは早いが、それを差し引いても、なんら注文はない。端的に言って、とてもいい。仕上がりは完璧。(日刊スポーツ評論家)