昨年のドラフトNO・1投手の呼び声が高かった武内が、評判通りのピッチングを見せた。プロのデビュー戦にもかかわらず、7イニングを投げて許したヒットは1本だけ。与えた四球も2個。完璧な内容で初勝利を飾った。

新人投手のデビュー戦とは思えないような落ち着きぶりだった。初登板の左投手で真っ先に気になるのが、「左打者に対して内角を投げれるか?」だろう。近年、先発タイプの左腕は、左打者の内角を突けない投手が多い。そのため、左打者を苦手にしている左腕は多い。しかし、武内は違った。

初回、先頭打者の福田に対し、2ストライクから内角の真っすぐを甘くならないように制球できていた。そんな武内の投球を見ていて感じたのは、ハートの強さだった。

右打者への投球を見ていても、真っすぐやスライダーが抜け気味になる球がちょこちょこあった。実際、4回の3者連続三振は、すべて抜けた球で奪ったもの。杉本と頓宮の三振は、いずれも内角を狙って投げた真っすぐが、外角高めに抜けて空振りしたもの。左打者ではあるが、森の三振も外角へ狙ったスライダーが内角に抜けて奪ったものだった。

この手のタイプの左腕は、左打者と対戦する場合、球が抜けて死球になる確率が高くなる。だからぶつけないような投球を心掛けるあまり、内角を厳しく突いていけなくなる。しかし、武内の左打者への内角攻めは「決して甘くならないように」と強い意志を感じさせた。

気持ちの強さを証明するのが、左打者に投げるチェンジアップだろう。5回2死、宗を三振に打ち取った球種は、内角のチェンジアップだった。左打者の内角へ真っすぐを投げられる左腕でも、ボールを抜くように投げるチェンジアップやシュート、ツーシーム系の球種は投げられない投手が多い。それを投げられるのが、武内の実力であり、プロで生き残っていくための武器になると思った。

マウンドでの表情は、闘争心を前面に出して相手を圧倒するのではなく、顔色を変えずに淡々と投げていた。球速も150キロを超える真っすぐをバンバンと投げるわけではないが、140キロ台後半の真っすぐを安定して投げていた。それでもまだ、抜ける球が多かったのはやや気になるが、デビュー戦でこれだけのピッチングができるのは並の投手ではない。派手さはないが、実戦向きのタイプ。今後のピッチングが楽しみになった。(日刊スポーツ評論家)

西武対オリックス 7回表を無失点に抑えた西武武内(撮影・宮地輝)
西武対オリックス 7回表を無失点に抑えた西武武内(撮影・宮地輝)