マイアミの激闘が猛虎に与える好影響とは-。日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(44)が24日、WBC準々決勝で結果を出した阪神佐藤輝明選手(27)と森下翔太選手(25)のさらなる進化を予告した。鳥谷氏は侍ジャパンの準々決勝・ベネズエラ戦を米国フロリダ州の現地で観戦。一流プレーヤーたちの熱き一挙手一投足が2人、そしてタイガースの成長を後押しすると力説した。
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佐藤選手、森下選手はWBC期間中、調整が難しかっただろうと想像します。1次ラウンドでは初戦から3試合連続でベンチスタート。4試合目のチェコ戦でともに初先発しましたが、それまでは代打待機が続きました。それでも準々決勝のベネズエラ戦ではそろってスタメンで活躍。素晴らしい経験になったのは間違いありません。
佐藤選手は「2番右翼」で1番大谷選手の次打者を託され、3回には右翼線に同点二塁打を放ちました。この1本は「大谷選手の次打者」としては今大会16打席目で初安打。「大谷選手の後ろ」という重圧を背負いながらの一打には数字以上の価値を感じました。森下選手は佐藤選手の同点打が飛び出した直後に勝ち越し3ランをマーク。2人とも数少ないチャンスで結果を出せて、自信をつけられたのではないでしょうか。
2人はベンチスタートから途中出場する難しさや感情を体験したことで、レギュラーで試合に出続けることのありがたみが身に染みたはずです。そして何より、超一流プレーヤーたちのレベルを肌で体感できたことが大きな財産となります。侍ジャパンの中であれば大谷選手や鈴木選手、吉田選手。ベネズエラであればアクーニャJr.選手やアラエス選手…。メジャーで成功している選手たちが自分たちの「一歩先」を行っている事実を知れたことで、さらに向上心をくすぐられたことでしょう。
ベネズエラの選手たちは皆、遠くに飛ばすだけでなく走塁、守備もハイレベルにありました。彼らの走塁意識の高さに驚いた日本の野球ファンも多かったのではないでしょうか。今大会は他国でもドミニカ共和国のゲレーロJr.選手やソト選手といった超一流プレーヤーが激走から懸命なベースタッチを試みる場面が多く見られました。
大谷選手が初めて本塁打王に輝いた翌年の24年に盗塁数を20個から59個まで激増させたように、昨今のメジャーのスター選手たちに「打てばいいんでしょ?」という姿勢は見られません。足の速い選手はパワーを、パワーがある選手は足をさらに磨いて、完全体を目指す。そんな超一流のリアルは実際に同じグラウンドに立って初めて痛感できるものです。
NPBに所属する大柄な主砲でゲレーロJr.のようにホームベースに向けて頭からダイブできる選手がいるでしょうか。4番打者で、ベネズエラ選手のように左前打で打った瞬間から全力疾走を貫いて、隙あらば二塁を狙える選手が何人いるでしょうか。打つだけではいけない。そんな事実を再認識できたことで、もともと将来のメジャー挑戦を視野に入れている2人は阪神でもさらに走攻守で進化してくれるのではないでしょうか。
ベネズエラ選手は日本戦で3本塁打を放ちましたが、試合前のフリー打撃では大半の選手が中堅から逆方向に打ち返し続けていました。気分よく柵越えを楽しむのではなく、ぎりぎりまでボールを引きつける練習を徹底した先に、ハイレベルなボールの見極めと長打を成り立たせていました。坂本選手も含め、WBCを経験した3人は必ず感じたことをタイガースの仲間にも伝えてくれるはずです。彼らの経験は本人の成長、そしてチーム力の底上げに必ずつながります。(日刊スポーツ評論家)




