伝統の一戦で見えた、現代野球の“落とし穴”ともいえる1球をクローズアップしたい。阪神が1点リードの3回、1死満塁で打者は6番中川。巨人先発のルーキー山城の交代がワンポイント遅れたが、2番手赤星が大山を二飛に抑え、続く中川の結果次第では、試合の流れが大きく変わる場面だった。

カウント0-1からの2球目、赤星は中川にフォークボールを左中間へ2点二塁打とされた。初球のカーブから2球目のフォーク。中川は完全に変化球を狙ったバッティングだった。

この打席では1球、直球を挟んだ方がいいと思っていた。伏線は開幕1、2戦と1球目にあった。中川は赤星の1球目の119キロの緩いカーブを積極的に打ってファウルにした。ここで岸田捕手には、変化球狙いを感じとってほしかった。相手打者への攻め方はチームでも共有している。この場面で速球を要求し痛打されたら「何やっているんだ」と怒られる。私もよく失敗したので、捕手心理はよく理解できる。ただ、ここでデータにはない1球を要求できるか、どうか。巨人バッテリーは中川に対し、徹底した変化球攻めで開幕2試合はノーヒットに抑えた。この試合の1打席目も、3球すべて山城の外角へ落ちる130キロ台の変化球で遊ゴロに仕留めていた。

ここまで極端な攻め方をするのは、おそらく中川は変化球に弱いと分析していたからだと思う。現代では弾道測定器などの最新テクノロジーを用いて、投手、打者の詳細データを収集する。各球団にはデータを分析、解析し、配球など戦術へ落とし込んでいくアナリストが存在する。いわゆる水面下での情報戦が重要視されるようになった。

数字は根拠だし、説得力がある。ただ、それが計算通りに通用するほどプロの世界は甘くない。試合は何が起こるか分からない生き物。捕手目線でいえば、調子、状況などで、打者の心理状態も変わる。打者側も投手がどういう攻め方をしてくるのか、最新システムで対策してくる。

100%ではないにしても、その時々の打者の顔つきやしぐさでも思惑が出たりする。5回、巨人の4番ダルベックが左中間へ同点2ラン放ったが、内角速球の要求で甘くなったボールだった。3試合で阪神バッテリーは、ダルベックに対し内角攻めが目立った。対策としてインプットされていたのだろうが、絶対に本塁打を避けないといけない場面での失投だった。捕手は客観的なデータにはない感性も重要だし、打者との駆け引きが野球の醍醐味(だいごみ)のひとつだと思う。要求したボールを投げられない投手もいる中、現代野球に対応していかないといけない捕手には、より大変な時代になったと感じる。(日刊スポーツ評論家)

巨人対阪神 3回表阪神1死満塁、中川に2点適時二塁打を浴びる赤星(撮影・増田悦実)
巨人対阪神 3回表阪神1死満塁、中川に2点適時二塁打を浴びる赤星(撮影・増田悦実)
巨人対阪神 3回表阪神1死満塁、中川は2点適時二塁打を放つ(撮影・浅見桂子)
巨人対阪神 3回表阪神1死満塁、中川は2点適時二塁打を放つ(撮影・浅見桂子)
巨人対阪神 3回表阪神1死満塁、中川は2点適時二塁打を放つ(撮影・上田博志)
巨人対阪神 3回表阪神1死満塁、中川は2点適時二塁打を放つ(撮影・上田博志)