プロ野球・日本ハムが23年春に北広島市に開業するボールパークは、「共同創造空間」というコンセプトを持つ。パーク内では、野球観戦だけではなく、湖でのカヌーや釣り、豪華な施設でキャンプを行うグランピングや、冬にはアイススケートも楽しめる。またマーケットやカフェ、レストランも軒を並べ、試合開催日以外でも、市民や観光客が集まる施設となりそうだ。道内外から人が集まる「北海道のシンボル」へ、期待は高まる。

プロ野球日本ハムが北広島市に建設する新球場の完成予想図
プロ野球日本ハムが北広島市に建設する新球場の完成予想図

「スタジアム」は、約32ヘクタールという広大な面積のほんの一部でしかない。ショッピングやレストランはもちろん、グランピングやカヌー、アイススケートまで楽しめるのが「北海道ボールパーク」だ。「『すばらしいな』というのが第一印象です。地元で、何か誇れるようなものになっていくんだろうなと思ってワクワクします」。そう期待するのは、年間来場者数300万人(06、07年)を超えたこともある旭山動物園の坂東元(げん)園長(58)。日本ハムが目指す「北海道のシンボル」の“大先輩”だ。

日本ハムが23年に開業を予定するボールパークの可能性について話した旭山動物園の坂東園長(撮影・山崎純一)
日本ハムが23年に開業を予定するボールパークの可能性について話した旭山動物園の坂東園長(撮影・山崎純一)

道を代表する観光地である同園は、動物本来の生活を見せる「行動展示」を導入し、約26万人まで落ち込んでいた年間来場者がV字回復。最盛期には、月間来場者数が東京の上野動物園を超えた。坂東園長は言う。「ウチは動物園の理想を追求してきた結果、海外からも一定の評価をもらえるようになった。来てもらえるからつくった…のではなく、自分たちの持っている本質を極めたかったんです」。この言葉に、ランドマークとして存在するためのヒントが隠れている。

日本ハムも新しい野球観戦の楽しみ方を提案しようとしている。360度回遊型コンコースや世界最大級の大型ビジョン、天然温泉エリアなど、既成概念にとらわれない観戦環境を提供することはもちろん、球場を離れても、北海道の最大の特徴である大自然を生かしたさまざまなアクティビティを準備する。同園長も「日本ハムさんもすごくいろいろな思いがこもっている。人を集める(という目的)よりも、自分たちの理想とするものはこうなんだというものをしっかり持ってらっしゃる」と共感している。

プロ野球日本ハムが北広島市に建設する新球場の完成予想図
プロ野球日本ハムが北広島市に建設する新球場の完成予想図

グラマラス(魅惑的な)とキャンピングを合わせた造語「グランピング」。優雅な設備で手軽にキャンプを行えるのが魅力で、若い世代を中心に流行している。日本グランピング協会の松本寛会長(65)も、北海道に誕生する同施設に期待を寄せる。「夏のアクティビティはもちろん、北国の場合、冬には“地吹雪ツアー”なんていうのも人気なんです。そこにしかない魅力、風土にあったストーリーを体験する。北海道は魅力にあふれています」。試合がない日であっても、何万人も集まるような夢空間。「野球場」の枠を超えた「ボールパーク」は、「国内旅行満足度1位」(株式会社エアトリ)「もっとも魅力的な都道府県11年連続1位」(ブランド総合研究所)の北海道を、さらに魅力的な大地にする。【特別取材班】

■新球場建設予定地周辺探訪

今月は日本ハム担当の山崎純一記者が、地元の声を聞きながらぶらりと歩いてみました。

11月中旬の日曜日。冷たい風が吹きつけ、道端には雪が積もる。新球場建設予定地である北広島市街を歩くが、広島本通沿いには、まだPR物が少ない。目に飛び込んできたのは、「ファイターズ」ではなく、…「らーめん」ののぼりだった。空腹を感じ、迷わず飛び込む。「らーめんかず屋」。店内に漂う香ばしい香りがさらに食欲を誘う。1番人気のみそらーめんを注文。濃厚なスープが冷えた体を暖めてくれた。

北広島市内にある「らーめんかず屋」(撮影・山崎純一)
北広島市内にある「らーめんかず屋」(撮影・山崎純一)

店長渋木慎司さん(27)は「楽しみだなと思っていますよ。テーマパークみたいで。実際にこの近辺って、そういう施設みたいなところがあまりないので、遊べる場所ができると思うとわくわくしますよね」と話す。街並みはまだ変わらないが、人々の心の中では、ボールパークはどんどん大きな存在となっているようだ。胃袋がすっかり満たされたところで、もう1度市役所方面へ戻ることにした。