見ていて気持ちがいい。オリックスの吉田正と言えばフルスイング。試合数が少ないながら、新人年から2年連続の2桁本塁打も達成した。打席ではタイミング以上に「いかに振れるか」を重視。そんな代名詞をあやうく手放しそうになった出来事が、敦賀気比(福井)時代にあったそうだ。

 「高3の時、大スランプで。右肩をけがして外野から一塁になって、夏の(福井県)大会は打率2割くらいでホームラン0。打点も準決勝まで0だった」。野球人生で最初のトンネル。はっきり覚えている。

 「バットが振れなくなった。だから強く振ろうという強い思いに変わった。どんな打席でも自分のスイングができる準備をしないといけないと思いました」

 小学校低学年から重さ1キロのマスコットバットを振り回していた。それが高校最後の大事な大会で振れなくなった。当時の原因を「メンタル的なもの」と自己分析し、戒めとする。

 「バットを振ることは勇気だと思っている。振るって決めたら振ればいい。打てる球が来て止まるってことは、迷いがあるから」。吉田正のフルスイングには強い意思が宿っている。そして野球におけるメンタルの大事さを、あらためて感じた。【オリックス担当=大池和幸】