西武が開幕3連勝を飾った。10年ぶりの優勝へ向け、最高の滑り出しだ。日本ハムとの開幕カードは強力打線が目立ったが、若きバッテリーにも注目したい。

 3月31日の第2戦。2-0の6回の守りだった。2死二塁でアルシア。ここで多和田-森のバッテリーは逃げなかった。初球から内角に突っ込む。143キロはボールとなったが、その後も執拗(しつよう)に懐を攻めた。5球でフルカウントとなり、6球目。内角を十分意識させてから外角を狙った直球は外れ、四球となった。一塁が空いているとはいえ、万一、次の大田に3ランを打たれたら目も当てられない。やはり四球は避けたかったが、土肥投手コーチは責めなかった。

 土肥コーチ あの四球を見て、多和田と心中しようと思った。

 直後、マウンドに行った。余計なことは言わなかった。多和田には「ここまで来たら、もう頑張れ」。森には「友哉、何かある? ない? OK」とだけ。大田は遊ゴロ。6回無失点の多和田に勝ちがついた。

 “心中”の伏線は、2回にあった。アルシアに死球を与えていた。長打を秘める新外国人。1発同点の場面で腰が引けてもおかしくない。だが、ぶつけた相手にも果敢に攻めた。土肥コーチは、その姿勢を見て腹をくくった。「技術不足で四球になったけどね」と、うれしそうだった。

 森 アルシアは前の日から内角はスイング出来てなかった。一塁が空いてたけど、勝負のつもりだった。

 多和田 森とは、試合前から攻めるところは攻めようと話していた。当てたのは申し訳なかったけど、勝負事。逃げると甘く行く。

 同点の走者となる四球だ。もし逃げた結果なら、土肥コーチは投手交代を考えたという。そうはさせなかった。洞察に基づき統一されたバッテリーの意思が、投球に現れていたからだ。

 交代となっていても、次の投手が抑えれば多和田に勝ちがつくのは同じ。しかし、今回は勝負どころを投げきってつかんだ1勝だ。昨季5勝の右腕が独り立ちする、きっかけになるかも知れない。【西武担当=古川真弥】