小笠原道大2軍監督、与田剛監督(左から)と話す村上隆行コーチ(2018年11月1日撮影)
小笠原道大2軍監督、与田剛監督(左から)と話す村上隆行コーチ(2018年11月1日撮影)

その選手は椅子に腰掛けうつむいていた。結果が伴わなかった。アマチュアゴルフの関西大会予選。通過スコアに及ばず、決勝進出を逃した。兵庫県の美奈木ゴルフ倶楽部に所属するアマチュアゴルファーの村上隆行“選手”(53)だ。

その同じ試合に出場していた元阪神監督の真弓明信氏が声をかけた。「俺も最初は、そんなだったよ」。アマゴルファーとして日本ミッドアマ選手権に全国選りすぐりの144人に進出したこともある先輩が慰めた。それでも村上はうなだれ、ため息をついていた。

今季から中日のコーチに就任した村上1軍新打撃コーチだ。現役時代147本塁打を放ち、近鉄いてまえ打線の中軸として活躍した。引退後は、関西独立リーグで監督を務め、チームを優勝に導いた。「練習をやればやるほど悔しくなくなる。それを自分の中で作らないと」と話す。そして付け加えた。「僕はみんなより失敗が多い。それを話していきたい」。

指導者でありながら、就任まではアマゴルフとはいえ現役アスリートとしてもがいていた。「11月の試合もエントリーしたかったけど、コーチの話が来たから断ったよ」。所属する美奈木GCでは関西シニア、関西ミッドシニアなどのタイトルを持つ金下政弘氏(70)らと腕を競ってきた。11月からは競技ゴルフは封印。ドラゴンズのコーチ一色の生活になる。指導者と現役アスリートの顔を持つ、異色の村上新コーチの手腕を見守ってみたい。【中日担当=伊東大介】